つくり続ける。考え続ける。301/No.で働くということ
Text / Sara Hosokawa Photo / Shun Shimizu Interview with Shun Shimizu, Naoto Uemura, Kai Kudo, Hina Katayama
前編「『なぜ働くのか?』の前に、『なぜつくるのか?』の話をしよう。」を読む。
「なぜつくるのか」を考え続けるからこその難しさ
それは本当にやりたいことなのか。つくりたいものなのか。「リアル」を追求していくやり方は、一般的な仕事の進め方とは違う。フリーランスとしてプロジェクト単位で関わる人も多い301では、今までのやり方と違うからこそ、やりがいがある反面、戸惑いを感じることも少なくないのではないか。以前は大手PR会社や編集業などでキャリアを積み、現在はフリーランスとしてイベントの企画など「人を引き合わせる」場をつくっている清水さんに、301 / No.特有の難しさについて聞いた。
── 301では、プライベートでも親交のある人や、本当に自分がいいなと思うものをつくっている人たちと仕事ができるのがモチベーションになっているし、そういう人にいいと思ってもらえるものを自分もつくりたい。彼らから「どう思う?」と聞かれることが多いので、自分も考えていないと見透かされてしまうし、襟を正されるような思いです。フラットな関係性の中でプロジェクトが進んでいくからこそ、自分で意見を持つことをいつも意識するようになりました。
信頼する人と仕事をする、ということは会社にいてもできそうだが、それとは何か違いがあるのだろうか。
── 「会社の中にいる自分とその人」という関係性ではなく「ひと対ひと」の関係性で会話できるので、距離がもっと近いです。だからこそ、主体性が求められる。301の面白いところはやっぱりリアルと真剣に向き合っていることだと思いますが、それは裏を返せば、自分自身に責任を持つことだとも言えます。真摯な姿勢で、自分たちのつくるものや場が人の生活にどう影響を与えるのか考え抜いてるからこそ、〈(tefu) lounge〉や新しい〈No.〉など、自分が関わったものごとが人々の生活に馴染んでいくのが見れるのだと思います。
理想を実現させるために必要なのは地盤を共にデザインしてくれる仲間
代表・大谷さんと会社全体の方針や思想を共有する上村さんには、組織として難しい部分はどこにあるのか聞いてみた。
── 理想を掲げてそこに真剣に向かっているけれど経理面や構造的な仕組みの地盤はまだ固まっていないというのが正直なところ。新しくNo.が移転した複合施設〈CABO〉などをつくる中で、どうコミュニティを広げるかということは意識していますが、最小単位のコミュニティである会社をより良い状態にするということにはまだまだ向き合いきれていないかもしれません。301はボードメンバーは数人いるものの、プロジェクト単位で個人事業主と組んでいくスタイルなので、組織設計が難しいところです。
301は働き方と生き方の境界線を溶かしていこうとしているからこそ、従来の組織の仕組みでははまりきらないことが出てくるのだろう。「バックオフィス」と呼ばれることもあるコーポレートスタッフ職だが、「仕組みをデザインする」という視点をもってクリエイティブに組織をサポートする人がチームには必要そうだ。
── また、大谷さんも自分も仕事とプライベートの境目があまりないほうなので、今はチームとしては少しマッチョな感じかもしれません(笑)。「301の思想には共感するけれど、双方のバランスは取りたい」という人も働きやすい環境にしていきたいですね。そういう意味では、人生がガラッと変わることもある女性に入ってもらえると雰囲気が変わるかもしれません。
No.という総合的な飲食店で働く意味
朝はコーヒーから夜はカクテルまで、そしてオールデイで上質なフードを楽しめるように設計され、デザインスタジオとしての顔も持つNo.には、バリスタ、バーテンダー、シェフ、そしてデザインチームが同居する。飲食店としても多機能的で、かつデザインの領域の人々も出入りする総合的な場で働く面白さを、バリスタ・工藤さんとシェフ・片山さんに聞いた。
── 飲食店で働いていると、目の前のことにフォーカスすることが多くなります。それ自体は大事なことですが、No.の場合は例えば「街にとってこの店がどうあるべきか」といった話や、長期的な視点での話ができるので働きがいがあります。そういった話が多々行われるので、ものごとをロジカルに整理したり、一回抽象化してみる考え方が身についてきました。将来的に場作りをしたいと思っているのですが、そのための解像度も上がってきたなと思います。(工藤さん)
── 職人的に腕を磨きたい人はレストランで働くのが順当ですよね。でも、決まったレシピで作ることに楽しさを見出しづらかったり、自分が考え続けることに意味があると思っているタイプの人は、No.にはまるかもしれません。また、一人一人プロフェッショナルな人が集まっているので、他の人の見習いたい部分を自分に取り入れたり、コラボレーションできるのが良いところです。(片山さん)
コラボレーションはチーム内にとどまらず、別の場所で活躍する人などとの共創もNo.で働いてきた中で糧になったと片山さんは語ってくれた。
── イベントやメニュー開発で関わったシェフから吸収したものは大きいです。そういうきっかけがないと一緒に働ける機会をもえられないような人たちと関係性を作れました。
一番影響を受けたのは井口和哉さん(〈REVIVE KITCHEN THREE AOYAMA / restaurant RK〉で野菜を中心にしたフレンチを提供していたシェフ。No.では「SUMMER COLLECTION」という新メニュープロジェクトでアドバイザーを務めた)。レシピを教えてもらうだけではなく、実際に現場でつくるリアルなスピードや原価などの現実面も、彼の横について学びました。どんな素材をなぜ組み合わせるのかなど、その人の料理との向き合い方や考え方を吸収できたと思います。
また、新しいNo.のメニュー開発ではアドバイザーとしてあるシェフに入ってもらっているのですが、味のチューニングの方法はとても勉強になりました。最初からそのような腕のあるシェフに依頼してメニューを考えてもらうこともできるけれど、あえてそれはせず、アドバイザーとして入ってもらうことで現場のレベルが上がっていくのはいいことですね。
前のめりな働き方ができる人にとっては、そういう場もたくさん用意してもらえるので、自分の動き方や考え方次第で楽しめると思います。
301 / No. は、「なぜそれをつくるのか?」に対しての視線を鋭く持つ人たちの集まりであると感じる。現代社会の東京という都市でそれを追求し続けるのは、言葉にするのは簡単でも実際はすごく体力と想像力のいることだ。
「だって仕事だから。」という諦めの言葉はもう聞き飽きた。自分が本当に豊かだと思うものづくりや関係性を創造していこうとする人にとっては、自分発信で考え、つくり続けるチャレンジングな場なのかもしれない。
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