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がんサバイバーこそ運動・筋トレをしよう!運動するべき理由と始める時の3ステップ


このnoteはこんな方におすすめです。

  • 運動がどのように健康に良いのか知りたいがんサバイバーの方

  • 運動をしたいと思っているが、まず何から始めたら良いか知りたいがんサバイバーの方

  • 運動する背中を押してほしいがんサバイバーの方

このnoteで得られる知識を1枚で!

がんサバイバーの方に、「がんになってしまったから休んでいたほうがいいんですかね?」や「筋トレはあまりしないほうが良いですかね?」といった質問をいただくことがあります。
私は迷わず、「運動や筋トレはした方が良いです!」とお答えしています。
ここ10年ほどの間に、さまざまな研究が、がんサバイバーの方が運動をすることで健康に良い影響があることを示しています。以下にその具体例を挙げます。

運動の効果を示す主な医学研究

1. がん患者が運動によって死亡リスク・再発リスクを減らすことを示したメタアナリシス
運動ががん患者の死亡率と再発リスクを有意に低下させることが確認されました。特に、運動介入は死亡リスクを24%再発リスクを48%低下させていました。
Morishita S. (2020). Effect of Exercise on Mortality and Recurrence in Patients With Cancer: A Systematic Review and Meta-Analysis 

2. がんサバイバーを対象にした、診断後の運動が死亡率に与える影響を調べた後ろ向き研究
がん患者11480人を対象に診断時点でガイドラインに沿った運動(週4日以上の中等度以上の運動、または週2日以上の高強度運動)を行った患者と行わなかった患者を比較して死亡率を調べた後ろ向き研究です。運動をしていた人は死亡率が25%減少したことが示されています。
Lavery JA. (2023). Pan-Cancer Analysis of Postdiagnosis Exercise and Mortality.

3. 乳がんのがんサバイバーを対象に16週間の運動プログラムをおこなったランダム化比較試験(RCT)
日常的に運動をしていない、BMI 25以上の肥満状態にある早期乳がん患者100人を対象に、標準治療後、有酸素運動・筋力トレーニングを行う群と行わない群に分けて検証した研究です。運動をおこなった群では生活の質(QOL)・疲労度・うつ病・推定VO2max(運動能力や全身持久力の指標)・筋力の全てを有意に改善しました。
Dieli-Conwright CM. (2018). Aerobic and resistance exercise improves physical fitness, bone health, and quality of lifein overweight and obese breast cancer survivors: a randomized controlled trial.

運動は、今現在の生活の質や身体・精神の健康だけでなく、未来のがん再発リスクを減少させる効果もあります。これまでの多くの医学研究を振り返っても、食事や薬を含めて、これほどポジティブな健康影響をもたらすことが示されたものは多くありません。
運動は、再びがんを経験したくないと考えるがんサバイバーの方にとって、真剣に取り組むべき重要な予防策の一つであるとご理解いただけたかと思います。

運動を始める時の3ステップ

運動に対する気持ちが高まってきたところで、がんサバイバーの方が運動を始めるにあたっての3ステップを紹介します。

主治医と相談、やるべきことと避けるべきことを理解する。

まずは、主治医に相談しましょう。自分の体にとって「やるべきこと」と「避けるべきこと」を理解しましょう。具体例を以下に挙げます。

リンパ浮腫がある方

  • 局所に長時間の圧をかけすぎないようにする。

  • 肩関節の可動域制限を改善する運動を取り入れる。

  • 弾性着衣を用いたトレーニングを取り入れる。

骨密度が低下している方、または骨転移がある方

  • 骨折リスクの高い部位に過度な負荷をかけないようにする。

  • 転倒リスクを最小限に抑えるため、水泳などを取り入れる。

末梢神経障害がある方

  • 皮膚障害に気づきにくいため、手袋をつけてダンベルを持つ。

  • バランストレーニングを積極的に行う。

人工肛門がある方

  • 息止めによる腹圧をかけすぎないよう注意する。

  • スポーツ時には人工肛門を保護するプロテクターを使用する。

詳細な運動方法については後日、それぞれの健康状態に応じた内容を深掘りします。
参考文献:NCCN Guidelines for SurvivorshipNCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology: Survivorship


信頼できる運動のパートナーを見つける

運動は一人ではなかなか継続することができません。「今日から運動しよう」と決心をしてもなかなか続けられないのは多くの人が経験したことがあるかと思います。運動を継続するためには信頼できるパートナーを見つけ、モチベーションを維持することが重要です。
パートナーは以下のような人や場所が考えられます。

医療専門家

  • 入院をされる場合は担当医や理学・作業療法士に相談し、リハビリを希望しましょう。入院中だけでなく退院後のリハビリ・トレーニングをどのように行うべきかアドバイスを聞くことが重要です。

ジムのトレーナー

  • 最初の時期はジムに通い、正しいフォームや器材の使い方を学びましょう。特に筋トレは安全に行うため、パーソナルトレーニングを数ヶ月受けるのがおすすめです。

  • 最近では、がん患者やがんサバイバー向けのジムやコミュニティも増えています。こうした施設では、専門のトレーナーが個別対応してくれます。

友人・家族・バーチャルなコミュニティ

  • 友人や家族と一緒に運動を始めると、モチベーションを維持しやすくなります。オンラインで運動法を紹介する動画も活用しましょう。


有酸素運動と筋トレを組み合わせる

運動は、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることが理想的であることがわかっています。

有酸素運動:心肺機能の向上、体重管理、ストレス軽減に効果があります。ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などが代表例です。強度別の有酸素運動の例を示します。

筋力トレーニング(レジスタンストレーニング):筋力トレーニングは、筋肉量を増やし、代謝を高め、全身の健康を支える重要な運動です。有酸素運動と同じかそれ以上に重要とされています。筋力トレーニングには自重トレーニング・フリーウェイトトレーニング・マシントレーニングの3種類があり目的に応じてトレーニングを行うことが重要です。

「筋トレなんて若い健康な人がやるもので、私には関係ない」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、がんサバイバーこそ筋トレをした方がよいということが、近年の研究で実証されています。さらに、ご高齢の方でも安全に実施できるトレーニング方法がありますので、ご安心ください!

心血管系の健康促進と筋肉・骨の強化を同時に達成するには、有酸素運動と筋力トレーニングをバランスよく取り入れることが重要です。以下の運動量が推奨されています:

  • 有酸素運動: 1週間に150分以上の中強度(例: 早歩き、軽いジョギング)

  • 筋力トレーニング: 週3回程度

ただし、これらの目標は厳しいと感じる方も多いと思います。運動を始めたばかりの方がいきなりこの水準に達するのは難しいことが一般的です。
追加の記事で解説しますが、有酸素運動・筋力トレーニングともに短時間・少ない負荷でも「やらないよりはやった方がよい」というエビデンスが複数出されています。まずはどちらかの運動を一つずつ、少しずつ始めてみて増やしていく、習慣化していく、という流れが良いと私は思います。

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