〈ショート〉リボンのついたジェンガ



〈ジェンガ〉


うそで積まれたジェンガは
崩れた


ばらばらに飛んでいったまま

今日ひとつの
リボンのついたジェンガを

床で見つけた
拾った


それをそのまま
積み重ねることは
できなかった


リボンを外して
ひとつ 重ねた

リボンは案外
すぐゴミ箱に捨てられる


一瞬の華やかさ
そのリボンに
扇風機のような安心感は私にはなかった





〈包装紙〉

綺麗な包装紙で包まれた贈り物が
届いた
中身は空っぽだった


その中に贈り主らの愛が
愛が
つまっているらしい

私はそれを部屋に持ち帰り
床でひろげる

包装紙が
欠けたビーズに見えた

その欠けたビーズを
丸だと
丸だということにした

太陽に当ててみる
反射する光に癒されてみる

「ああ きれいだな」

といううそを
10回空に投げた



ずれた角度
ずれた角度
ずれた角度
は無意識のうちに
私の腕に
腹に
ちくちくとこだましながら

何年もの年月を経て
そのうそは
大きなビーズになり


きのうついに
部屋からはみでた



〈ビーズ〉

彼らはそれをピンクとよんで
美味しく食べていた



私も食べてみていた

ジャスコとか
イズミヤの通り道の 少しカビ臭い道と
ドブ川の香りがした 



ピンク


駐輪場の
少し横で
「電気ついたままやでー」
教えてくれるやさしいばばあ
ドブ川の横



ピンク



3メートル先のたこ焼き屋の間で
そのピンクというピンクを
幾度か吐いた




小さくピアノが鳴っている

窓からけむりが出ている

薄汚れた看板の
お好み焼き屋の匂い


飛び出し注意に
ステッカーを貼って

ピンク


一番通った道を歩きながら

盛大にピンクを流した


その道の地面が一瞬
虹色に光って

すこし笑った






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