にんじん
右横にたばこを吸う君
ぼくはたばこをやめたから
君がたばこを吸ってる時は
にんじんを食べてる馬だって
いうことにしてる
右横ななめから見た馬は
なんとも凛々しくて
むしゃむしゃと音を立てるすきまから
香ばしい香りが
眉間の距離を縮めては広げる
スローで見る電車のドア
夢の中のデジャヴ
秒を数えるごとに
目の下がオレンジに染まり
ぼくの右手にも
うっすらオレンジがかった
気がした時
ぼくの腰ににんじんが
ぐさっと刺さった
ああ ぼくは何ともない感じで
昨日読んだ最高に笑える
ギャグ漫画を
「どうぞ」といって
いまにんじんが刺さっていることを
ないことにして
ないことにして
ぜんぶないことにして
ただぼくは
君のふざけたくしゃくしゃの
しわが見たいだけで
腰に刺さったにんじんは
1分後消えて
君は馬からもとにもどる