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孤児たちがいちどに笑う世界

孤児ばかりあふれる世
ありふれた光景すぎて
あたりまえの日常に

子宮に戻ってやり直そう
乳飲み子の求めに
稚児の求めに
存分に応じてやろう

このうえない位
可愛い可愛いと
頭を撫でて抱きしめてやろう

まるで自分が創造主の妻で
他を満たすことが最上の喜びであるかのように
まるで自分がマリア様の夫で
どこにいても愛を受け取っている幸福な存在であるかのように

凪風のゆりかごは
怒号からも嘆きからも幼き耳を護り
ふにふにの肌を撫でる有機的な空気は
四季の花々の香りをその鼻孔に届ける

空腹の渇きも 孤独の渇きも
いつものあの手がまるごとひっくるめて
地面がカラカラとひび割れたりする前に
満たしてくれる

”この世界はいいところだ
 この世界は優しく、自分は安全で、護られている。
 わたしは大切な存在だ。

 だから私は世界を大切にする
 より良い場所になりますように”


そんなシンプルな体感さえあれば
どんなにか、この生を楽に生きられるだろう?

そんなシンプルな理解さえあれば
どんなにかこの世は楽園だろう?


みなしごたちは無機質な焼け野原で
ジャンク品と化した電化製品から
レアメタルを拾い集める

都市の埋蔵金属の集合体は
仮想世界のピースを着実にはめ、
パズルの完成は個人を匿名アノニマスにする。

無知のイグノラント・ヴェールのかけられた虚構は
もはや三次元よりもわれわれの心を忠実に具現化し、

序列は記号的意味を失い
その下支えをしていた価値的記号も、崩壊する


孤児たちはそれを見て、いちどに笑う
”ほうら、やっぱりピエロだった
はだかの王さまは、はだかだよ!”

笑いは現実世界に染み出して、
朝焼けを虹色に染め、
青空に狐の嫁入りを降らせる。

今日は、満月が欠けていく。
潮の満ちてぎゅうぎゅうの窮屈さは、
そろそろおしまい。




この記事を書いてから、3年も経っちまった。
自分に励まされてみる。
右に左に大ブレしているようで、私の核のところは変わっていないんだ、とほっとする。

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すかーれっと/Scarlett
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