「やさしいRPG」最後の最後で1回だけ聞ける、厳しくもやさしいコトバ
2015年、世界中がド肝を抜かれたゲーム、「UNDERTALE」。
「やさしいRPG」という異名のとおり、出会った敵を倒すんじゃなく、みんな助けてハッピーエンドを迎えることができるというのが斬新でした。
他にも、あたたかみのあるキャラクターデザイン、味わい深いセリフ、熱い熱いBGMの数々・・と、どれか一つだけでも特集が組めるくらいにキュンキュンポイントが詰まっているのがこの作品。
そんな中で私が紹介したいのは、知る人ぞ知る「最後の最後の名言」!
(※2つのセリフを除いて、なるべくネタバレは避けています。)
最後の、そのまた最後に
まずは、このセリフがどうして「最後の最後の名言」なのか、お話しなくてはなりません。
「やさしいRPG」こと「UNDERTALE」では、プレイヤーの行動に応じてエンディングが変わります。
おもに、出会った敵を「倒す」か「助ける」かが分かれ道です。
このセリフが聞けるのは、主人公がもっとも周りを思いやり、やさしい行動を取りつづけた先に待つハッピーエンドの時だけ。
また、少なくとも1回は別のエンディングを経由しなくてはなりません。
そういう点で、たどり着くまでの道のりがもっとも長い「最後の名言」なんです。
・・ところが。
やっとの思いでこのエンディングを迎えても、例のセリフを聞かずにスタッフロールに進んでしまう可能性がとっても高い!
なぜなら、このセリフを発するキャラクターがハッとするほど僻地にいるから。
“最終決戦”のあと、ある場所にそのキャラクターが現れるのですが、これまで来た道をゼンブ引き返すくらいの道のりを抜けないと会えません。
「最後の名言」の中でも、本当に最後にしか聞けないんです。
「UNDERTALE」にワープとかルーラはなく、ついでにダッシュもないのでひと苦労。途中で切り上げた人もいるのではないでしょうか。
Youtubeのような動画サイトでこのゲームを知ったひとも、「すべてが終わった後」という動画映えしづらいシーンなだけに見逃しがちなポイントです。
しかも聞けるのは1回限り。聞いた後にセーブしてしまうと、リセットしない限りもう聞けません。
・・でも!
このセリフには、それだけの手間ひまに負けない“重み”があります。
やさしさを実行する厳しさ
シンプルな言葉ですが、これを実践するのがいかにタイヘンか・・!
実はこのセリフ、ゲームが始まってすぐに聞ける、とある別のセリフと対になっています。
じっさい、「UNDERTALE」の登場キャラクターの中には、たとえ悪いやつでなくても、事情があって主人公の命を狙っている者がわんさか出てきます。
そんな相手を前に、反撃しないで突破する(逃げたり和解したり)のはかなり難しい・・!
”敵”を倒さないでいるとレベルもずっと1のままなので、自分は弱いのに、受ける攻撃だけがどんどん激しくなっていくんです。
名人でもない限り、クリアまでに何回もゲームオーバーとコンティニューを繰り返すと思います。
その結果「UNDERTALE」では、進めば進むほど、『「ころすか ころされるか」という道を選んだ方が、かえってラクなんじゃない?』・・・というギモンが、心に芽生えてくるのです。
それでも。あえて茨の道を進むことにはちゃんと意味があります。
道の先に、ご褒美がある
『このセリフが聞けるのは、主人公がもっとも周りを思いやり、やさしい行動を取りつづけた先に待つハッピーエンドの時だけ。』・・と、記事のアタマのほうで書きました。
裏をかえすと、主人公は「ころすか ころされるか」ではなく「ころさず ころされず」を続けたからこそ、ハッピーエンドを迎えることができたんです。
・・たとえばゲームでも、それ以外でも。
敵意を向けた相手を受け入れるためには、とんでもない”相手へのやさしさ”が必要だと思います。
もちろん、自分に向けられた敵意から生きのびることも、なくてはならない”自分自身へのやさしさ”です。
もし2つの”やさしさ”を大切にすることができれば、出会った頃には想像もつかなかったような、ハッピーな未来をつかめるかもしれない。
「コンティニュー」ができない現実で実行するのは難しいことですが、せめて「自分と相手、どちらも守る道はないか?」・・と考え続けることはできるのではないでしょうか。
「ころさず ころされず」というコトバには、そんなメッセージが込められているように感じます。
(おしまい)
・・・・・・・・。
・・・・・・・・と、それっぽいことを書いてみた私ですが・・
たった今、ハッピーエンドとは真逆の「出会ったキャラをみんな倒してしまうルート」を進めているということは、どうかナイショでお願いします。