『色彩を持たない田崎つくると、彼の巡礼の年』/村上春樹

僕は怖いんだ。自分が何か間違ったことをして、あるいは何か間違ったことを口にして、その結果すべてが損なわれ、そっくり宙に消えてしまうかもしれないことが」
エリはゆっくり首を振った。「駅をこしらえるのと同じことよ。もしそれが仮にも大事な意味や目的を持つものごとであるなら、ちょっとした過ちで全然駄目になったり、そっくり宙に消えたりすることはない。たとえ完全なものではなくても、駅はまず作られなくてはならない。(中略)もしそこに何か不具合が見つかれば、必要に応じてあとで手直ししていけばいいのよ。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?