トメの食欲(生きていくうえで大切なのは美味しいご飯でしょ)
トメにとって、最大の幸せと生き甲斐は、食事だろう。
基本的に、トメは1日に2回、食事をする。
朝も夜も、散歩から帰ってきて、玄関で足を拭かれると、
トメは一目散にキッチンに走る。
追いかけて、トメのお皿を洗い、フードをそこに注ぐと、
トメは前足で飼い主(僕か旦那さん)に飛びかかり、
「早く、早く」と急かす。
「お座り」「お手」「反対の手でお手」「伏せ」「ルック!」
とコマンドを繰り返し、トメは涎(よだれ)をだらだらにして、
一応、命令に従う…が、気が急いているので、
ものすごいスピードでアクションを取る。
「お手」については、僕も指示が早いのか、
旦那さんは、そのテンポの速さに、笑う。
ご飯を平らげると、歯磨きガムをもらいに、またキッチンに来る。
キッチンに飼い主がいない場合は、飼い主の足元に来て、
キッチンの方向に目線を送る。
流しと冷蔵庫の間のケースの上から2段目に、
歯磨きガムが収納されていることを、トメは知っている。
たまに僕が早起きで、散歩・食事・歯磨きガムを済ませて、
その後に、旦那さんがベッドから起き出すと、
トメは「まだ、私、歯磨きガム、もらっていないんです」という顔をして、
収納場所と旦那さんの顔とを順番に見つめるらしい。
「もう、もらったんでしょ?」と旦那さんが確認すると、
トメは「いいえ、まだです」という顔をするらしく、
それでも「でも、あげたって聞いたよ」と要望を拒否すると、
「ちぇっ」と言った具合で、残念そうに自分の部屋に戻るのだとか…。
賢い。
食事以外でも、僕が冷蔵庫を開ける度に、トメは駆け寄ってきて、
「私の牛肉のおやつ、冷蔵庫にありますよね?」と目を輝かせる。
または、キッチンの別の棚からコーヒー豆を取ろうとすると、
「そこには、ボーロのお菓子がありますよね」とまた近づいてくる。
とにかく、食事・お菓子・おやつが好きなトメなのである。
でも、これはトメを保護犬として、我が家に受け入れた時のこと、
栃木でトメを捕獲し、僕たちにつないでくれた方が、穏やかに言った。
「多分、この子は、ずっと子供を産まされている中で、
満足にエサを与えられていなかったのだと思う。
だから、食に関してだけ、わがままかもしれない。
保護された時は、栄養も足りていなくて痩せていたし禿げていたから、
ご飯だけは、ちゃんとあげてあげてね」
というトメの人生に想いを馳せて、ついつい、おやつをあげてしまうのだけど、
トメももうそろそろおばさん、おばあさんの年齢を迎えようとしている。
肥満に気を付けなければいけない年頃。
「ちょっとくらい、くれてもいいじゃない?」とカリカリと催促するトメと、
「もう、十分にあげたでしょ?」と厳しくしようとしつつ、
「まぁ、じゃぁ、ちょっとだけだよ」と甘やかしてしまう夫夫の日々は続くのである。
(ちなみに人間たち夫夫は「少しくらい、いいよね」と言って、
毎晩、お酒を飲み過ぎているのが、目下の問題。
他人に優しく、自分に厳しく…生きていくのが理想なのに、な。
いつも自分に優しいのが、トメの飼い主の、僕なのである。)