食事の記録#1/スペアリブの肉骨茶(バクテー)

ここ最近日記関連の本を読むことが多く、大いに刺激を受けている。読んでいくうちに自分でも書きたい欲求が高まってきたため、これを機に始めてみたいと思う。

テーマを「食事の記録」としたのは、ネタ切れの心配がなさそうだったから。何か一つのテーマを設けることで継続率が上がるのではないか、という仮説に基づいてテーマを設定した。これまでも書いては辞め、書いては辞めを繰り返してきたのだが、根本的な問題として「ノンジャンル」であったことが大きいと見ている。

今回、日記を始めるにあたって影響を受けた本の一つに、小沼理の『みんな日記を書いて売ったらいいのに』というZINEがある。本書収録の「朝から夜に向かって書けば1本のテキストができあがる」に出てくる以下の一節を読んだとき、日記を書く意欲が湧いたのだった。

本や読書が好きで、ジンを作ってみたいと考えているひとは少なくないと思う。その時、日記は一番はじめやすいと考えている。小説はテーマや登場人物、舞台の設定を考える必要があるし、エッセイも題材を決めて展開を練らないとなかなか面白いものにはならない。一方、日記はその日に起きたことや感じたことを、朝から夜に向かって順番に書いていけば、それだけで一本のテキストができあがる。

日記を書くノウハウとして、これ以上に簡潔で実用的な説明はないように思う。この法則に則れば自ずとストーリーが出来上がるし、よっぽどのことがないかぎり、文章が破綻することもない。しかし、いざ実践してみると、確かにするすると書けはするのだが、続けられそうな手ごたえが今ひとつ得られなかった。それはひとえに自分の「照れ」が原因である。要するに感情の表出を制限してしまうというか、手加減してしまうのだ。これを日記として公開するのはなんだか面映ゆい。そんな風にストッパーが働いてしまう。日記を書いてみると分かるのだが、単調に感じていた日々の中でも、感情は絶えず躍動しているのだ。今回執筆を再開してみて、日記は感情の記録なのだということを改めて思い知らされた。

行き場を失った日記へのモチベーション。しかし、1日の流れを記録していくうちに、あることに気が付き光明を見出す。当たり前すぎてこれまで意識してこなかったのだが、毎日欠かさずに行っていることがある。それは食事である。食事であればトピックに事欠かない。それに自分が好きな分野でもあるので、モチベーションを維持して楽しんで書けるように感じたのだ。そこに気付きを得て、テーマを絞り込んで執筆することに決めた。

基本的には自炊を中心に書いていく予定で、成功したら書くけど失敗したら(不味かったら)書かない。それぐらいのスタンスでやっていきたいと思う。

さて、前置きはこの辺にして本題に。
タイトルを見て、そもそも肉骨茶(バクテー)とは何ぞや、と疑問に思った方も多いかもしれない。どのような料理か簡単に説明すると、シンガポール、マレーシアのローカルフードで、その実態は豚のスペアリブをスパイスやニンニクと煮込んだスープ料理である。料理家・有賀薫のレシピでその存在を知り、機会があれば作ってみたいと思っていたのだ。行きつけのスーパーで豚のスペアリブが安売りされていたので、このたび実行に移した次第である。

肉骨茶について調べてみると、本場では具材やスパイスをふんだんに入れているようだが、有賀のレシピは至ってシンプル。具材は豚のスペアリブ、ニンニク、ネギ(青い部分)のみ。スパイスは五香粉を使用する。多少時間はかかるものの、作業工程は少なくて作りやすい。一度鍋でスペアリブを吹きこぼしてからスープ作りの工程に移るため、アクとりの手間はそこまでかからない。そのため、煮込んでいる間はほぼほぼほったらかしでOK。1時間近くかけて具材を煮込み、醤油ベースのつけだれ(醤油と砂糖を混ぜたもの。スペアリブはこのたれにつけて食べる)を添えれば完成だ。

スープの味付けは塩のみだが、スペアリブの出汁が効いているのでコクは十分に感じられる。そこに五香粉を加えることで、華やかな味わいに仕上がるのだ。ニンニクは箸を入れるとほろほろになるほど柔らか。実をほぐすとパンチの効いた風味がスープ全体に広がり、塩気が引き立ち旨味が増していく。そして五香粉を纏った香り豊かなスペアリブと、甘辛なつけだれのマリアージュ。有賀が言うように、口にした瞬間に"アジアの風"を感じさせる一皿だ。

次回作るとしたら、つけだれやスープにパクチーを入れたらさらに美味しくなるかも、と思った。レシピがシンプルな分、薬味や具材を変えたり加えたり、いろんなアレンジが楽しめそうな一品であった。

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