ああ、これで最後

壊れかけてはいたけど、だましだまし使ってきたヘアクリップ。ついにさっきネジが取れて真っ二つになってしまった。今度こそだめかー。ってとこから、なんとかネジをつけ直して、もう一度使えた〜！よかった！

それでなんとなく色んなストーリーが浮かんだので、ヘアクリップの話のまま、浮かんで来たストーリーと重ねて、書いてみた。 

キン、と金属の転がる音がした。ああ、これで最後かもしれない。今までも、この瞬間を何度も何度も体験し、その度に全身が強張り汗をかいて、手足が震える。そんなことではいけないと、ネジを手に取り、元に戻してやる。完全とはいかないまでも、無事に戻った姿を見る度にふと、全身の力が抜けていく。

キン、と金属の転がる音がした。ああ、これで最後か。これまでだって、一度はそう思った。でもその度に、直してきた。本当にもう直らなくなる時がいつ来てもいい。それはずっと、覚悟している。けれどその時が来るまでは。何度ネジが外れてもいい。ただその時より先に私が諦める事だけは、したくない。

キン、と金属の転がる音がした。ああ、これで最後かな。今までだってこういう事はあって、その度に仕方ないと一度は諦めてきた。その途端に少し、惜しくなってしまう。きっとそれが良くない。けれど何となくネジを止め直してみると、案外そんな事で直ってしまうものだ。次外れた時はと、思いはするが。

３つとも140字ぴったりにしています。

それぞれ、経験したことのある人はそれと重なるし、そうでない人はピンと来ないかも。

2020.08.10