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6.12 恋人の日

青く光る蛍を追いかけているうちに

僕の体は真っ白な煙になった

煙になると体がばらばらの粒子になっているので

車の排気ガスなんかの風圧で

僕はそのあたりの適当な空気の一部になってしまった

僕は悲しくなると思いきや

軽くなっていった無数の体についていった心に

言いようのない解放感すら覚えたのだ

何かわからないけれど

キラキラ光る青い光を追いかけて

辿り着いたのは君の部屋の中だった

粒子の僕を見つけたら

君は泣くだろうか

僕はここに居るのだけれど

煙になって粒子になって

君の口から

体の中に入ることだって出来るのだと思って

それはちょっと気持ち悪いだろうからやめておくけど

それくらい一緒にいれたらと思っているということだよ

白い朝が来て

青い光が弱くなって

粒子の僕が再集結して煙に戻る

目を開けたらきっと

ただ

いつもの寝台の上にいるのだろうな

すべて忘れて

すべて夢だったみたいに

寝ぼけまなこの僕の上を

青く光る蛍が

円を描いて飛んでいったのを

ぼくは一生知ることが出来ない

6.12 恋人の日
#詩 #小説 #恋人の日 #恋人 #煙 #JAM365 #日めくりノベル

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