6.2 裏切りの日・路地の日
曲がり角の向こうに真実があると聞いて曲がってみたけど真実なんてなかった。
裏路地に落ちていた汚れたチラシはこのブレスレットを買うと幸せになれると書いてあったが効果はなかった。
明日はきっと晴れるから大丈夫と言われた次の日は雨だった。
豚肉とナスの味噌炒めを頼んだのに出てきた料理に豚肉が入っていなかった。
こちらの方がお得ですという文言は限られた一定の人間にしか得じゃない仕組みだった。
安かろう悪かろうと言われてきたけど安くても良いものもあったはずだ。
どの曲がり角を曲がれば幸福が落ちていたのだろう。
それとも落ちているのではなくて幸福が頭上に浮かんでいたのを見落としたのだろうか。
いつだって裏切りの証拠を探してばかりいる人生だ。
地面や汚れを見つめる毎日だ。
それをハードボイルドかなにかと勘違いしている厄介な脳みそ一つ。
路地の先の陽だまりを黒猫が足早に通り過ぎた。
不吉な予感と結びつきかけて、裏切りの証拠を探す僕はそいつを幸福の象徴と見なすことにした。
夏日の半袖、短パン、スニーカー。
溢れる裏切りを数える厄介な日常一つ。
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