10.10 缶詰の日
眠りの缶詰を開ける夜。
カルボナーラのクリームのような薫りに包まれる私。
誰にも邪魔されぬ夢が欲しくて
眠りの缶詰を開ける夜。
騎士は来ない。争いが無いから。
悲しみはない。満たされているから。
カルボナーラのクリームのような薫りの煙が部屋を満たしていく夜。
柔らかな目元に乳白色の幕が降りると、私はただたゆたう、波に。
夢の世界は全てが私であり、眠る個体は宇宙を内包している。
眠りの缶詰を開ける夜。
私はどこにも行かない。私はそのどこかであるから。
貴方はどこにもいない。貴方は私の一部だから。
目を閉じて、カルボナーラのクリームのような薫りに包まれる私。
眠りの缶詰を開ける夜。
乳白色に溶ける自我。
缶切りを落として、透明な膜に波紋が拡がる。
青い点滅は延々と続く。