4.9 クジラの日・フォークの日
雪雲の上をクジラは急いでいた
急いでいたので雪雲を連れて
地上からは見えぬように身を隠した
雲の下では季節外れの雪の気配
雲のうえでは急ぐクジラの姿
北へ急ぐクジラ
故郷を目指す
桜の花弁を凍らせる雪と
クジラの瞳に溜まる涙の重さ
雪雲の上下で均衡を図る
大きなフォークで一刺しに
雲を巻き取ればひとたまりもない
けれど人々は
終わりゆく桜を嘆くばかりで
そのはるか頭上にある
雪雲の上のクジラには気づかない
勘の良い赤子だけが何人か
空を指差しフォークを刺すよう命じたが
大人たちにはそれは
たわわに揺れる桜の花を指していると
情緒の分かる子供だと
そう思われて微笑まれて終わる
クジラは急ぐ
雪雲の上を
故郷に向かって急ぐ
今も
4.9 クジラの日、フォークの日
#小説 #詩 #クジラの日 #フォークの日 #雪 #桜 #JAM365 #日めくりノベル