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8.6 ハムの日・雨水の日
雨の朝は何もやる気がない。
とりあえずでカーテンを開けて、薄暗い光を部屋に招き入れた。
私はそのなんともぼんやりとした光を受けて一つ伸びをすると、パジャマの裾を引きずりながら寝ぼけ眼で顔を洗いに行った。
外を流れる雨と同じ水が、蛇口から溢れる。
雑に顔を洗うだけでも、少し目が覚めた。
タオルで水滴を拭きながら、冷蔵庫を開ける。
卵と、牛乳と、ハムと味噌。
一度冷蔵庫を閉めて、棚の中から6枚切りの食パンを出した。
藍色のお皿に、一枚の食パン。
まあるいハムを二枚重ねたまま載せる。
ざっくりと黒胡椒をふって、おしまい。
マグカップに牛乳を入れて、一緒に窓際へ持っていく。
雨音を聞きながら、床に体育座りをしてハムパンを囓る。
なんでもない雨の朝の一幕。
卵も焼かないでダメだなあと思って、でも食べるのは自分だからいいかあと怠惰を水に流して。
ハムの塩味が口内炎の出来た舌にしみて、苦笑した姿が曇った窓ガラスに映った。
そろそろこの街にオリンピックが来る。
遠い先と思っていたけれど、来てしまえばあっという間だ。
私はこのまま変わらないのだなあと、ハムを噛み締めながら、静かな雨を眺めていた。