2.24 月光仮面登場の日
真円からは少し欠けてしまったが
今夜は月夜だ
黒い幕から剥がれ出し
楕円の月が夜空を渡る
月は港で泣いている男を見つけた
「おい、お前さん」
男はびっくりして河童のようにひっくり返った
「どうした彼女にでも振られたか」
男は涙がひっこんだようで
煙草を落として走って逃げた
「涙が止まって良かったな」
のっぺらぼうの月男は
コンクリートに落ちた煙草を拾い
一本抜き取って咥えたが
男はマッチは落としていかなかった
月男は手を伸ばして
黒幕でギラギラと燃える赤い星から
火をもらった
「センキューソウマッチ」
紫煙はぷかぷかとドーナツ型に夜空に浮かび
黒幕で待機していた赤い星が
大きな口に歯をむき出しにして
その紫煙を食べた
月男は暗い海を眺めながら
煙草三本分一服すると
腰を上げてまた夜空へと飛び立った
今夜はどこへでも
月男が黒幕を渡っていく