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タイ-アヘンの博物館巡り① アヘン博物館(Hall of Opium )レポ 

タイのチェンライ県にはアヘンの博物館が2つある。今回はその2つのうちで規模の大きい方であるHall of Opiumを紹介する。

訪問日:2022/11/19(土)

アヘン博物館の建っている地域はラオス・ミャンマー・タイの3つの国境が接する地区で、ゴールデントライアングルと呼ばれる。ゴールデントライアングルとは、かつての世界最大の麻薬密造地帯であったことからつけられた名称だ。アヘン・ヘロイン、またそれらの原料であるオピウムポピーの密造・覚せい剤のメタンフェタミンの密造が活発に行われていた。ゆえに金が実る場所、金が活発に取引された場所、としてゴールデントライアングルとなった。
なおタイ北部での麻薬密造はほぼ撲滅することに成功しており、観光地になるほどに治安は良くなったが、ミャンマーやラオスではいまだに密造が行われているらしい。

Hall of Opiumはゴールデントライアングル公園から車で数分山を登ったところにある。かなり広大な土地に立っていて自然に囲まれている。

展示のキャプションはタイ語か英語しかない。なので私のような英語不自由者はキャプションを全部写真にとってGoogle翻訳にぶち込んでなんとか読んだ。

芥子の樹脂(生アヘン)を熱湯で溶かして綿で何度も濾す。豚皮の油を加えることで風味と香りが良くなり、夜まで冷ますとアヘンができる…というかんじでなんとなく意味は読み取れる。

この博物館は写真撮影オーケー。

入場料200バーツ。建物は大きく、展示にはかなり力を入れていた(※過去形)。

まず入場すると暗くて長い道を歩かされる。麻薬の恐ろしさを伝えるためなのか、道にはおどろおどろしい彫刻が施されている。

その道を抜けると、神々しいおばあちゃんがいる。  

偉い人らしい

神々しいおばあちゃんの後は、芥子畑のレプリカが現れ、オピウムポピーとアヘンに関する概略説明がある。
しかしよく見ると芥子畑のレプリカはボロボロ、展示パネルも青地に白文字なのかと思ったら経年劣化で黒色が焼けて青くなっているのであった。これらからこの施設が数十年経っていて更新が随分されていないことを察する。

造花なのに枯れている。
(元々枯れてる仕様ではないと思う)
 焼けまくって青くなってるパネル

だいぶ前に制作されたと思われるアヘンの概略と施設の説明のムービー(タイ語or英語のみ)を見させられた後、円形の開けたスペースに案内された。天井はドーム状で、美しい星座が描かれている。ここはオピウム・アヘンの歴史の概略を学ぶゾーンなのだが、かなりお金をかけて作ったシステムだった。もしやこの博物館、科博レベルに良質かもしれないと期待が高まる。

星座が描かれてるのはケシがギリシャ神話と関わりがあるからだと思われる。

中世の錬金術師パラケルススの言葉で有名なのがある。

「全ての物質は毒である。毒でない物質は存在しない。ある物質が毒となるか薬となるかは用いる量による。」

アヘンは紀元前3400年前という古くから薬として使われていて、様々な薬効がある。薬として使えば優秀な薬の一つには違いないのだが、量が多かったり使い方を誤ると問題を引き起こす。アヘンは薬の中でも難しい立ち位置にいるのだ。

アヘンの光と闇(食品・薬品・香水等と犯罪)の両極的な面をビジュアル的に感じるゾーン。
右側が光に焼けてて真緑。

アヘンとお茶の貿易の歴史のゾーンが始まる。アヘン戦争は茶と深い関係があるので、お茶に関する展示も充実している。(後半の展示にアンティークのティーセットなんかも展示してある)

中世のヨーロッパの街並みと船のセットが作られている。ここはディズニーシーですか?


しかしアヘン戦争のゾーンに差し掛かるところで突如真っ暗になる。明らかに部屋の電気がついていない。近くにスタッフはおらず、電気のスイッチらしきものを探して押してみるものの明かりは点かず…。おい一番盛り上がるところだろアヘン戦争て。ここだけ展示が見えないってどういうことよ。

※部屋が暗すぎるのでフラッシュをたきながら撮影したパネル

他にもスイッチを押しても作動しない展示の仕掛けがいくつかあり、ギリギリ感が否めない。
まあ管理が適当なのはタイらしさということで妥協するしかないだろう。

こうして二階の展示を見終わった後、一階へ。

はあ…ここは電気が点いてる…良かった…
おや?この窓の奥…なにかな?なにかな?
アヘンおじさんだー!

かつてアヘン窟と呼ばれるアヘンを提供する場所が中国、東南アジア、ヨーロッパ、アメリカにあった。こんな感じのベッドが用意されていて人々はそこでアヘンを嗜んでいた。アヘン窟ではアヘンのほかにお茶や菓子なんかを提供していたそう。

次は私が一番楽しみにしていたアヘン喫煙具の展示ゾーン

アヘンを計るための重り。鳥や象などの形がある。
パイプに火をつけるためのランプ
絵付きのオピウムパイプ
ヒスイや象牙が施されているオピウムパイプ

実に美しい工芸品です。どれだけアヘンが当時愛されていたか、この豪華な装飾からおわかりいただけるだろうか。
オピウムパイプの筒は通常は竹で作られるが、象牙や銀、陶磁器などで作られる高価なものもある。

美しいダンパー


これはダンパー(オピウムボウル)と呼ばれるアヘンを入れるところ。筒の上についているきのこのような部分である。ここは陶器や翡翠で出来ていて、絵が描かれていたり彫刻されていたりする芸術性の高い部分である。

アヘンの喫煙具の芸術性が高いのは、もともとアヘンは上流階級の人が嗜むものだったことが大きい。ゆえに豪華なものが多く作られている。

水パイプは陶器と金属でできていて、丸っこくて可愛い形をしている
これはタバコのパイプ。アヘンを吸うのにもつかわれたとか。
アヘンピロー

アヘン喫煙のための枕は普通よりも高く作られている。これはアヘンの効果が薄れてきたときにアヘンを吸うことを辞めさせるためにわざと不快な枕にしてあるという。へえ~!おもしろい!


モルヒネの発見と皮下注射器の開発で西洋医学は飛躍的進化を遂げる。

展示は近代から現代の領域に入ってきました。モルヒネがここでついに登場。

1800年代初め、アヘンからモルヒネが発見されました。これは世紀の大発見で、初めて自然物から純粋な物質を取りだせた出来事だったのです。
モルヒネが発見されてから、薬用植物から次々と物質が発見・合成されるようになり、西洋医学は飛躍的に進歩を遂げていくのである。

アヘン関連以外のドラッグも登場。

コカの葉を使ったワインがヨーロッパで流行った時代もあった。

今では最強ドラッグのコカインにもかつて医療に使われていた時代があったのだ。コカインはコカの葉からとれるアルカロイドで局所麻酔や強壮剤に使われた。

次はドラッグの犯罪に焦点が当てられた展示のゾーンへ。
薬として使われていた一部の物質は次第に問題が表面化し、規制されるようになった。その規制は闇市場を作り、一大ビジネスとなった。

ヘロインが詰まったクマちゃん
麻薬はあの手この手で密輸される。これはコンドームに粉入れて、密売人に雇われた人がこのコンドームを飲んで乗るのだ。体内で破れたらオーバードーズになっておしまい。映画とかでこういうの見るよね。
ヘロインを探せゲーム。空港にいる人々の持ち物をマウスでクリックし、ヘロインの密輸を見つけるというミニゲームがある。誰が作ろうと言ったのだろうか。CGの古さも相まって傑作。
薬物は世界中で懲罰対象。バレたらこんな牢獄に入れられるけど、それでもやりますか?というメッセージ。しかもこの牢獄、足元に展示してあり、囚人を見下すような空間に仕立て上げられている。これも犯罪抑制に役立つ演出の一つなのだ。
未成年の薬物使用のプロバガンダムービーとか流れてる。
ブラウン管テレビで絶賛放映中。

そういえばこの博物館の液晶、みんなブラウン管でした。ブラウン管なんて…いつよ!!いつの話よ!!!

最後に「It's your choice (あなた次第です)」と書かれた世界一メッセージ性の高い鏡をみて終了。

正義か悪かなんて見方次第だ

博物館に併設されたお土産屋やカフェもあったようだが、2022年11月現在は閉鎖中。
力を入れて作られた世にも珍しいアヘンの博物館なので末永く続いてほしい…のでタイに行く際はぜひアヘン博物館へ。


アヘン博物館 (หอฝิ่นอุทยานสามเหลี่ยมทองคำ / Hall of Opium)

入場料:外国人200バーツ

営業時間:月~土曜日 8:30~15:30


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