海を見た

精神科に2週間に一度通っている。病院の最寄り駅にアイスクリームの自動販売機がある。夏の間の通院帰りには、そこでアイスクリームを買って、駅のホームで食べながら電車を待つのが定番だった。今日も診察だった。終わると夕暮れ。秋らしい肌寒さ。アイスクリームを食べる気にならなかった。私の置かれている状況は変わらないけど、季節は確かに流れている。
診察室に入ると、どうですかと大体聞かれる。今日は人生って長いなって思いますと答えた。変な気起こしてない?と先生が言って、私は少し泣きそうだった。手首にカッターを当てたことも身体をぶら下げても大丈夫そうな紐と場所を探したこともないけど、私がこのまま長生きしてしまうとしたら、なんとなく恐ろしい。途方もない。別に死にたくないけど、生きていくための強い口実は特にない。次の診察も2週間後だ。
悲しくなったので、帰りはアイスクリームを食べる代わりに海を見に行くことにした。歩いて5分もせず海に着く。以前、明るい性格の友人が「youtubeで宇宙の様子を見ていると自分の悩みがちっぽけに感じるからおすすめ」と言っていたが、全く同意できなかった。宇宙が広くても私が悩んでいることは変わらない。それに宇宙ってデカすぎて怖い。彼女の言う宇宙は、私にとっての海かもしれない。
空の色、水面の色、波がひいたの砂浜に、空の色が反射した様子を見て、波の音を聞いて、風が冷たくなってきたのを感じている間、胸にあった不安のことは忘れている。
今日の晩御飯は炒り豆腐にしよう。

2023/10/13 17:34

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