ビットコインとCIA陰謀論!?公開情報で事実を丁寧に確認していこう。(自主転載)
【ビットコインとCIA陰謀論。公開情報で事実確認をしよう!】
創作するにも陰謀論を楽しむにも、事実確認は大事です。BTCとCIAの関係で公開されている事実を見ていきましょう。
Gavin Andresenさんが2011年4月27にBitcoin Forumに投稿したものです。「CIAの会議でビットコインのプレゼンテーションをする」と。この書き込みが未だに尾を引いていて、「ビットコインにCIAが絡んでる!」系陰謀論の大本になっています。
果たして真相は…。
この「CIAの会議」とは「In-Q-Tel ( IQT )が開催したIC向けの技術カンファレンス」です。IQTはベンチャーキャピタルで、諜報機関に技術を提供するような企業に投資をしています。オープンに情報公開されており、誰でも事業計画を提出できます。陰謀論的な要素もありません。
なので厳密には「Gavin さんはCIAに行っていない」です。CIAは関係しているものの一部に過ぎません。毎年行われる単なる「年次会議」なので、秘密の会合でもありません。ある意味公の場所でプレゼンテーションをしただけです。
よって「GavinさんがCIAと接触した」は、デマとはいかないまでも「ミスリード」と言えます。
正確なファクトは「IQT開催の年次カンファレンスでプレゼンテーションをした」です。
なので本件だけを元に
・ビットコイン関係者がCIAと接触した!
・ビットコインはCIAが作った!CIAに支配されてる!
と言うのは「明確なソースの無い推測や妄想」になります。CIAの関与を示すならば、別途具体的なソースが必要です。
GavinさんがなぜCIAを強調したのか、その意図ははかりかねます。ただ前後してNakamoto SatoshiさんがGavinさんに対して以下のメールを送っています。
「I wish you wouldn’t keep talking about me as a mysterious shadowy
figure, 私のことを謎の影の人物として話し続けるのはやめて欲しい」
Gavinさんを諫めるようなメールです。当時Gavinさんは実名顔出しでラジオやイベントなどのメディアに積極的に出ていました。その際、物事をやや大げさに語る傾向がありました。
「Satoshiは神秘の存在だ」「FBIとバトルがあるかもしれない」などのように。
その一環として、CIAを殊更に強調したのかもしれません。(もちろんこれは私の推測です)
またGavinさんがSatoshiさんに送ったメールには「私はIQT開催の年次カンファレンスでプレゼンテーションをします」と正確なことを伝えています。
しかしBitcoin Forumの投稿では「私はCIAに行きます」という「ミスリード」を書きました。公の場所で物事をやや大げさに語る傾向はここでも出ていました。
(当時のGavinさんの態度を責めるつもりはありません。当時は界隈全体が浮き足立っており、CIAやFBIを絡めて大げさに語るのは界隈全体の傾向でした。Gavinさんだけが突出して浮いていたわけではないです)
2011年に「ビットコイン関係者がCIAと接触した」は、デマとはいかないまでも「ミスリード」です。
ファクトは「IQT開催の年次カンファレンスでプレゼンテーションをした」です。
その2
「CIAにSatoshiさんの質問をしたらグローマー拒否された」を検証します。
ジャーナリストがCIAに「サトシ・ナカモトの正体を教えてください」と情報請求。回答は
「請求を拒否します。CIAは請求された文書の存在について否定も肯定もできないことをお伝えします」でした。
ドラマ等で有名な「Glomar response(NCND)」のため陰謀論が加速しました。
「CIAはビットコインの秘密を隠してる!」
「Satoshi Nakamotoの正体をCIAは知っている!」
真実は何なのか?検証していきましょう。
ジャーナリストはFOIA(情報公開法)に基づいて、CIAにSatoshiさんに関する情報請求をしました。こちらのwebサイトで「誰でも」情報請求できます。が、CIAに請求しても
・返信が無い
・返信が来ても自動返信の定型文
のどちらかでしょう。皆様も(法律を遵守の上で)お試しください
「地球に宇宙人は来てますか?」と質問したら「守秘義務のためお答えできません」という「自動返信」が来るかもしれません。「CIAは宇宙人の秘密を隠している!」と騒いだら完全に陰謀論ですよね。本件もそれに近いです。「CIAにSatoshiさんの質問をしたら自動返信が来た」だけです。
仮にジャーナリストが「CIAと込み入ったやりとりを複数回した」のであれば、その証拠を明示すべきでしょう。現状、証拠は一切出ていません。Glomar responseの原文すら提示していません。CIAからのレスポンス原文を一切提示していません。
結論「Glomar responseだけでCIAとビットコインを結びつけるのは強引すぎる。ほぼ陰謀論」です。
SatoshiさんとCIAを結びつける証拠にもなりません。
その3
「Satoshi NakamotoはTorを使ってヤバイことをした」を検証します。海外では定期的に出る話題ですね。ウワサの出所はコレです。
「私はサトシのIPを8年以内に公開する。歴史的な興味深い出来事になるであろう。私の知る限り彼は常にTorを使っていた」
theymos氏が、2013年4月17日にBitcoin Forumに書きました。彼は初期にフォーラムの管理人やっていました。SatoshiさんのIP入手もあり得ない話ではなく。
「8年以内に公開する」「歴史的な出来事になる」なんて書いたものだから、陰謀論が加速しました。
「8年後にビットコインの真実が公開される!」
「Satoshi NakamotoはTorで犯罪行為してたのか!?」
果たして真相は…
2018年12 月9 日に、theymosはこう書きました。
「考え直した結果、2021年にIPを公開するのはやめにした」
theymos氏がSatoshiさんのIPを本当に知っているのかも不明で、Torの件も何一つ証拠を明示しませんでした。「8年以内に公開する」「歴史的な出来事になる」とセンセーショナルに書き立てましたが、何一つ証拠は出していません。
当然「Satoshi NakamotoはTorを使ってヤバイことをした」も陰謀論です。theymos氏の過剰な書き込みから、根拠の無いウワサが広まっただけです。
ビットコインを黎明期から見ていた人は「Satoshi Nakamotoを匂わすこと」が容易にできます。直接Satoshiさんとやりとりした人もいるでしょうし、IPを見た人もいるでしょう。
わずかな繋がりから話を大きくして、詐欺や陰謀論につなげる人も多いです。このTor騒動もその1つと言えるでしょう。
なおTorを使うこと自体は犯罪ではありません。今でも合法です。
サイファーパンクとTorは文化的、技術的に密接に関わっていますが、犯罪ではありません。
余談。サイファーパンクにおける「思想的な意味合いでのTor」は世代によって意識が違います*以下は私の主観も含みます。
90年代以前から活動している生粋のサイファーパンクは「反政府・反検閲」の思想が強く、「自分のネット活動を外部に知られたくない」理由でTorを使う人が多い印象です。もちろん合法的なTor使用です。Torを使ったからといって匿名性が確実になるわけではありません。それを承知の上で「ファッション的にTorを使う」人も多い印象です。
2000年代からの世代は「純粋に暗号化の技術に興味がある」ので、思想的なものは薄いです。当時の若者にとってのサイファーパンクは、厨二心をくすぐられる魅力がある一方、斜に構えてみてしまう古臭さもありました。「サイファーパンクを語る俺かっけぇ」という厨二的な秘密感がある一方、「90年代の反政府ノリ」がちょっと古くてださく感じる。思想的なTorにも執着は無いです。
2010年代(ビットコイン以降)からの世代は、反政府の思想は極めて薄いでしょう。現在の若手で「私は反政府だからTorを使う」なんて人は少数派だと思います。
2010年代以降の世代は「ビットコインに興味はあるがサイファーパンクはよく知らない」がメインだと思います。当然「暗号化技術と反政府の思想」も結びつきにくい。その流れは2000年代から始まっていたと思われます。当時のアメリカの若者で思想強めの人は少数だったかと。(私の主観含む意見です)
以上、余談「思想的な意味合いでのTor」の世代意識差でした。ノード運営等のTorは技術か?思想か?の切り分けが難しいため触れません。
以上(再)【ビットコインとCIA。公開情報で事実確認をしよう!】でした。
私はクリプトで今後も創作を続けますが、同時に「ファクトチェックや事実の整理」もしております。今回のように「事実」も適宜書いていきます。なおほぼ全ての要素のおいて、今回の切り口で書いたのは世界で私が初めてだと思います(←違ったらすみません。検証してください)
私が黎明期のビットコインに詳しいのは事実で、当時の経験に基づいて書いています。でも「昔のビットコインを持っていて大金持ち」なんてことは無いです!かなり貧乏です笑。
また投資や投機については一切書きません。「歴史」「文化」「技術」についてのみ今後も書いていきます。
別アカからの自主転載です。
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