Zen2.0マインドフル・リトリート ~青木ヶ原樹海の溶岩洞窟とテントサウナで川ドボン!~
「童心に帰る」そんな時間を過ごすことができた。その記憶をここに書き留めておこうと思う。
週末、「Zen2.0 マインドフル・リトリート@富士山麓 ~大地に坐す~」に参加した。
Zen2.0とは鎌倉建長寺で毎年行われる禅の国際的カンファレンスで、私は昨年からボランティアスタッフとして参加している。
今年のテーマは「大地に坐す」。今回のリトリートはこのテーマを体で感じることを目的として開催された。
「大地に坐す」
この地球で私たちは母なる大地から生まれそして帰っていく。この大地で全ては繋がり生を共に分かち合っている。
土中に生きる微生物、土を踏みしめて生きる多様な動植物、土を通して循環する地球の自然。
私たちは母なる大地に生かされているのだ。
そんな漠然とした思考の中での理解を手放し、ただただ自然の中で過ごす2日間。
大地に触れ合い、五感で感じた富士の裾野に広がる自然を一つずつ振り返ってみよう。
5本指で歩く~青木ヶ原樹海ハイキングと溶岩の洞窟
今回、集合して最初に行ったのが靴を履き替えること。5本指のトレッキングシューズ、ビブラムファイブフィンガーズ(Vibram FiveFingers)を初体験。
5本の指を1本1本、靴に指定された指の場所に入れようとするのだが、入らない。指は意思をもって動いてくれない。なんとも頼りない私の足指。
靴の外側から、足指一本一本を確認しながら指が入るべき場所へ誘導してあげる。指の足ってこんなに神経伝達が難しく、足指が意思持って動くことができないんだと、自分の足指について学ぶ。
参加者全員がこの頼りない足指を体験し、靴を履き終えたところで集合し、旅は始まった。
簡単なチェックインとして一人一人の旅の目的、楽しみにしていることなどを一言シェアした。私は「元気に楽しみたいと思います」といったような浅~いことを言ったような気がする。
何はともあれ青木ヶ原樹海へと移動し、ハイキングのスタートだ。
噴火から生き返る森
歩き出してすぐに青木ヶ原樹海のイメージが大きく変わった。薄暗くジメジメとしていて道に迷ったらもう出てこられない深い森、というイメージだったが、そんなイメージは全くなかった。
どちらかというと、人間の手が入ることのなく富士山の噴火から自然の力で生命を育み生き返った原生林の森、といった生命力あふれるイメージだ。
ゴツゴツとした硬い溶岩の上に根を張ることができず、根をむき出しに生きる木々。溶岩が固まって作られた大小さまざまな黒い溶岩石を覆うふかふかの青緑色のコケ類。細い樹木が真っ直ぐに伸び、木漏れ日が差し込む樹海の天井。
深く土中に根を張ることのできない木々は強風で倒れ、倒れた木々が長い時間をかけて土に帰っていく。そのゆっくりとした生命の営みが手つかずで横たわっている。
森は生きている、森は進化している、森は生物と繋がっている。そんな森の物語を視覚からの情報だけでなく肌や足裏の感覚でも感じることができた。
途中、ゴツゴツの硬く黒い溶岩でできた洞窟を案内してくれた。洞窟の中を一歩進むごとに気温が下がり内部は冷凍庫の寒さ。溶岩石から染み出した水が洞窟の中心部で氷の山となり解けずに残っていた。
ガイドのガッツさんが所々で語ってくれる深い造詣にとんだ森や土、大地についての解説は樹海のみならず、自然の営みの偉大さについて学びを深めることができた。
そして今回のリトリートのテーマを一番感じる時間になったのが、深い森の中で思い思いに大地と繋がる時間を持てたことだ。
倒れて苔の生える大木の上に坐する者、落ち葉でふかふかの大地にあおむけになり寝転ぶ者、木と対話するかのように木にもたれかかり全身を預けるもの。一人一人がこの生きている森と会話し体感できる時間となった。
「食べる」を共有すること
青木ヶ原樹海のハイキングを終えて宿へ移動。自然の中に立つコテージだ。
夕食はガッツさんお手製の自然酵母で作るこだわりピザ!卓上のピザ専用ガス窯であっという間に美味しいピザが焼きあがる。
アツアツのピザを切り分けてシェアしながら会話は弾んでいく。美味しいお酒が体中をめぐるように、一人一人の今日ここにたどり着いたストーリーが明かされていく。
ピザ伸ばしに挑戦する者、ピザ焼き当番をかって出る者、具材の組み合わせで新しい味づくりに挑戦する者。
参加者一人一人の個性がキラキラと輝く時間。朝、初めましてだった仲間が、もうすっかりZen2.0メンバーと溶け合っている。
「同じ釜めしを食う」という素晴らしい日本語表現がある。まさに、人間の根源である「食べる」という行為を作るところから共にすると、仲は自然に深まるのである。
焚火を見つめながら語る言葉
ピザの夕食後は焚火を見つめながらのダイアログ。お決まりのマッシュルームを焼きながら、今日一日、感じたことをシェアした。
言葉一つ一つ、それぞれが体感したことを感じたまま言葉に出してみる。その言葉を味わい、自分の体験と重ね合わせて余韻に浸る。
あいにく雨がぽつぽつと降り出し、短い時間であったが深い時間となった。
マインドフルな朝
翌朝は雨上がりの曇り空。霧の濃い、朝霧高原の澄んだ空気と響き渡る鳥の鳴き声。
ほんの一瞬、雲の切れ間に美しい富士山を臨むことができた。
そして、Zen2.0メンバー、みほさんによる朝ヨガ。朝日が差し込む芝生の上でゆっくりストレッチ。気持ち良すぎて寝落ちした。
雪解け水の川に飛び込む経験
2日目のメインアクティビティは「テントサウナからの川へドボン!」。自然の中のテントサウナも、雪解け水の川へダイブもめったに経験できることではない。初体験のアクティビティにドキドキとワクワク。
もう、この頃になると人前で水着になる恥ずかしさや化粧が剥げてスッピンになることや汗と水まみれになる髪型も、まったく気にならなくなっている。
そう、小学校低学年くらいの童心にもどっているのである。化粧も髪型も、女という見たくれも、そんなものはまったく気にならない、スクール水着でプールに飛び込んでいた幼少期の自分がそこにいた。
3つのテントサウナに用意されたロウリュウ水は「ヒノキの香り」「日本紅茶」、リラックス効果満点である。
じっくりと体を熱して、川へ…。ドボンというよりは、恐る恐るだったが、2回、3回繰り返すうちに川水の冷たさにも慣れて水遊びを楽しんだ。
しっかりと汗を流す者、テントの中の会話を楽しむもの、ベンチチェアで森林浴を楽しむ者、冷たい富士山の雪解け水で水浴びを楽しむ者。思い思いの時間を過ごした。
ランチは富士宮市名物のマスとマスの卵の親子漬け丼。美味しかったです!
何を得て何を手放したのか
マインドフルに自然と戯れた2日間はゆったりとした時間であったが、あっという間に過ぎていった。この2日間で私は何を得て何を手放したのか。
母であること。
妻であること。
社会人であること。
女であること。
日常生活で決して手放すことができない、私が背負っている社会的ロール。
年を重ね一つずつ掴み、背負ってきたもの。それをこの2日間は手放すことができた。
子供たちと海、川へ行けば一緒に遊んでいても絶えず目の先には子供たちがいて、安全を心配する母としてのふるまいを崩さずに遊んでいる。
家族を守る者として料理を作ったり、生活のあれこれを心配したり、外に出れば仕事をする社会人の顔がある。
身だしなみに気を付け、少しでも綺麗に見せたいという女心だってやっぱりまだ捨ててはいない。
そんななんやかんやを全部手放してみたら、小学生の自分になっていた。
そして、そんな小学生の自分、何も持っていない自分がただただ、かわいくて愛おしく思えた。
リトリートの意味
リトリートって何だろう。
リトリートの定義は「日常を離れて、いつもとは違う環境に身を置き、リラックスをして自分と向き合う旅」とのことだ。
様々なリトリートがあると思うが、何を目的に、誰と、どこで何をするか。自分と向き合う時間の過ごし方について選択のポイントは様々だと思う。
今この時代に情報が洪水のように押し寄せてくる。自分が握りしめていた価値判断の基準がぐらぐらと揺さぶられ、問いを突き付けられる毎日。
常に自分は何者か、何を軸に何を大切に生きているのか。自問自答し続けている。
いったん、すべてを手放し頭と心と体を開放する時間はとても貴重な時間だと思う。
青木ヶ原樹海でのマインドフル瞑想。大地に触れ合い対話した時間。富士山の雪解け水に飛び込み体に感じた冷たさ。
この2日間、自分の感覚器を開きまくり五感でしっかりと体感し、深く自然と繋がることができた。
日常に戻り、母、妻、仕事人、女という私が持っている大切な自分の役割を楽しむことができそうだ。
企画、運営していただいた皆さん、本当にありがとうございました。そしてこのリトリートで出会った皆さん、このご縁に感謝いたします。
最後に、何も心配することなく私を家から押し出してくれた家族に感謝しかない。ありがとう。あなたたちがいてくれるから私は自由に羽ばたいていられます。
追記:
この、「Zen2.0 マインドフル・リトリート@富士山麓 ~大地に坐す~」は秋に同じプログラムを開催予定です。ご興味のある方はZen2.0のホームページをチェックしてください!
Zen2.0
ホールアース自然学校
このツアーガイドはホールアース自然学校のガッツさんです!
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