[詩]景色
見たことの無い景色を僕に見せて
想いを乗せ過ぎだと言われても
その色を その香りを その手触りを
秋分の日が過ぎ
ナイターの役目は色濃くなった
半袖か長袖かと気にするようになり
車内から降りる時に見える表情の陰影も増す
豪雪の日から半年が過ぎ
指の長さは関節ひとつ差になった
素手から革手袋を着けるようになり
スイング風が鼻先を掠めるまでの速度も増す
梅雨入り前のあの日から2年が過ぎ
頭の位置は肩辺りまでになった
帽子は青から紺色に染まるようになり
ゾーンが広がって2塁へ到達する確度も増す
文月に産まれてから10年が過ぎ
J球への知識は両手分を超していった
感覚と思考を切り替えられるようになり
同志たちと共に逆転の意味を知る回数も増す
見たことの無い景色は既に何度も見たのか
想いは価値では無く受け取る質感で
その喜びや その憂いや その本質だった
僕は
眠れない理由を探している
あなたを記す為以外は無かったのに
あなたは
留まる理由を探していない
僕を追い越す日が1年以内だと信じている筈
捕って
打って
走って
あなただけの景色を僕は後ろから見守る