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【読書感想文】ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー|ブレディみかこ

「思考することが好きなのだ」と諦めがついたのは、ほんの1年前のことで、頭の中の煩わしい羽音を消したい一心で子供用のらくがきノートを夜中にこっそり1枚拝借し、暗がりのリビングでとにかく書き出した真夜中1時。ほんの1行目の答えでした。

私は考えすぎで悩んでいるのではなく、そもそも思考が好きなのだ

日本で生活していると、というと語弊があるのかもしれませんが、私の住むこの世界では今もなお曖昧なことなかれ主義が是とされる風潮を感じます。
「慣例に基づいて」遂行されるものが望ましく「前例のないもの」は倦厭され、「効率の良し悪し」を訴えたり「ニュアンス」を汲み取れない者は冷やかな態度をとられることが少なくありません。

そこにきてこの「ニュアンス」や「暗黙のルール」を読み取ることが苦手な私は「形骸化された慣習に疑問を持つこと」は生活の常で、そこに疑問をもつことなくシンプルに取り組める友人たちが羨ましくて仕方なかったものです。(いまだに手こずっている感は否めません…)

何かが違う(違和感)と同じではない(認識)の差

著者のブレディみかこさんは、日本出身。ご主人はアイルランド出身。2人の間に産まれた息子さんと3人でイギリスに住んでおられます。
息子さんは、文章から推測するに、外見からしてホワイトでイエローな少年のようです。中学生。そしてよく思考し、フェアで、まじめで、クールな考え方の持ち主です。(かっこいい)

個人的に見た目が「ホワイトでイエロー」なこと、さらにそれを自認していて(当たり前か)周囲からの反応もそれであり、そのほかにも移民や混血、あきらかな階級格差がある多様性がそこに存在する世界に身を置いているます。その実は生半可なものではないということは想像に難くありませんが、厚かましくもその環境をほんの少し羨ましく思えました。

「自分は自分以外の何者でもなく、普通ではない(普通なんて存在しない)」ことは誰しもにあてはまることのはず。ですが、日本には日本人がほとんどで、髪が黒くて、服を着て靴を履いて(現状はマスクをしていて)、それらは普通の人としてみなされ、普通の日本人としての態度や慣習を自然に、ときに強烈に求められることになります。

ときにそれは(私にとっては?)とても窮屈きわまりなく。周囲から浮いた存在にならないように、目立たないように身を小さく、押し黙り、協調していることを表現するのみを強制されてるように感じることもあります。

それらの普通が存在しない世界。多種が自明のもとにあり、「多様性」という便利かつ知性的そうな言葉ではなく、不公平も差別も含みながら雑然とそこに置かれている世界がこの本のなかにありました。

違うことで存在するもの、しないもの

偏見や差別は存在するとして、個人の尊厳や事情もまた同じく正しさだけで解決できる類のものではない。糾弾することは容易だけれど、そこから生まれる反発や関係性の変化も考えにいれたとき、自分はどう考え、どう振舞うべきなのか。ホワイトでイエローな彼はそこをとことん考え、独自にその時点での回答をだし、態度に示します。

「友達だから。君は僕の友だちだからだよ。」
p113  7.ユニフォーム・ブギ

本書によると、その行為は彼の特質というよりは(もちろんそういう部分は大いにあるとは思いますが)それらを考える機会が学校教育に取り入れられているというのです。これは軽いカルチャーショックでした。

日本ではこれらはどちらかというと高等教育というか、金銭的に余裕のある家庭が話題にするようなイメージだったのですが、改めて考えてみれば当然ながら貧困層や教育を優先できない環境の子供にこそ必要な知識です。

シンパシーとエンパシー

シンパシーは日本でも多様される、同じ考え方や同じ類の悩み、同族種のへの思いやる行為や同情・哀れみなどの感情、行為を表す言葉です。

エンパシーは、シンパシーとは似て非なるもので「他人の感情や経験などを理解する能力」だそうです。能力・・・重い言葉です。

シンパシーは感情なので沸くこともあるかもしれません。でもエンパシーはどうでしょう。知識や経験を積まないと得られないかも。や、もしかしたら「得られた」と思った時点でそれはエンパシーとは言えないかも・・・

詳細は本書を読んでいただければ私が説明するよりも抜群にわかりやすく、ストレートに書いてありますので、是非!

子供むけの本に見えますが本当に勉強になる1冊でした。
もう1回読み返してみたいと思います。

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー ブレイディ みかこ https://www.amazon.co.jp/dp/4103526815/ref=cm_sw_r_tw_dp_XV0T18ZK3M9MTRZZSS02



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