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壮大な渋谷シミュレーション

「もし渋谷に核兵器が落ちたら」という「シミュレーション」、した女子大生の絶大な勇気と実行力に絶賛

2024年8月14日 14時27分 NHK

制作したのは、長崎出身の女子大学生ら。そこに込められた思いとは。

そんな事態を、スマートフォンのAR=拡張現実で疑似体験できるコンテンツ「KNOW NUKES」が、8月から公開されています。

NHK


渋谷駅前のスクランブル交差点でアプリを入れたスマートフォンをかざすと、渋谷の町並みに巨大な灰色のキノコ雲が浮かび上がる仕組みです。
(社会部記者 富田良)

制作のきっかけは「焦り」

長崎出身の大学4年生、中村涼香さん。被爆者の祖母を持つ被爆3世です。79年前の1945年8月9日、アメリカ軍によって原爆が投下された長崎。高校卒業までここで育った中村さんは、核兵器について考えることが当たり前の日常だったといいます。

街頭で核兵器廃絶を求める署名を集めたり、国際機関に核廃絶のアピールをしたりするなど、平和活動に取り組んできました。(中村涼香さん)

しかし、大学進学で移り住んだ東京は、友人との会話や日常生活の中で核の問題が話題に上ることはほとんどない、全く異なる環境でした。

広島の友人と核廃絶を目指す団体を立ち上げ、国際会議への出席や政府に対する要望などを行ってきましたが、社会の中で核問題に対する関心が高まっているという実感は得られなかったといいます。

中村涼香さん

「ほかのテーマと比べると、核兵器の問題が社会の中で急いで取り組まなければいけない課題としてあまり捉えられていない感触がずっとあった。被爆者の方々の高齢化が進む中で、議題設定の優先度を上げていかないといけないという焦りのようなものを感じていた」

新しい形への挑戦  ロシア軍のウクライナ攻撃~

ウクライナに侵攻するロシアが核の威嚇を繰り返し、中東でも、核兵器を保有しているとされるイスラエルをめぐり緊張が高まる中、核の脅威を可視化するための「鋭いメッセージ」が必要だと考えた中村さん。

思いついたのが、核兵器の恐ろしさを疑似体験できるARコンテンツでした。

しかし、原爆投下の再現は、被爆者の感情を傷つける可能性もあることを、これまで数多くの被爆者と交流してきたからこそ、強く懸念していました。

それでも制作を決めたのは、今のままでは被爆の記憶が継承できないという危機感からでした。

中村さん

「被爆体験の継承はこれまで直接話して伝えたり、絵本や証言集を見たり、あるいは資料館などに足を運ぶことだったりとアナログなものが多かった。もちろん大事な手法だけれど、デジタル空間に拡散されやすいものは少なかったと思う。今回のコンテンツは、SNSが主な情報収集源である私たちの世代にマッチしたものであり、これからの時代に向けて新しい被爆体験の継承という形を模索していく中で挑戦してみたかった」

コンテンツの制作は同世代のデザイナーが担当。監修は戦時中の写真のカラー化やデジタルアーカイブなどを活用して戦争の記憶の継承に取り組んでいる、東京大学大学院の渡邉英徳教授や長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎教授に依頼しました。

当初は広島に投下された原爆のキノコ雲を実寸大のサイズで再現しようと考えていましたが、技術や費用の問題で実現できないことが明らかになりました。

制約がある中で、どうやったら核兵器の恐ろしさを広く伝えることができるのか。

原爆を火球で表現したり、キノコ雲をあえてミニチュア化させたりするなど、さまざまなアイデアが出された一方、
公開しない方がいいのではないか」という意見が出た時もあったといいます。それでも表現できる最大のキノコ雲を再現、するという結論に至り、4か月ほどで完成させました。


被爆者が伝えた思い

公開を間近に控えた7月下旬、中村さんは日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)の事務所を訪れました。コンテンツの感想を親交ある2人の被爆者に聞くためです。

中村さんは原爆の投下を再現することの心理的負担や倫理的な問題を指摘されるのではないかと考えていましたが、返ってきた感想は予想とは違うものでした。

田中熙巳さん

「核兵器が爆発した瞬間はそんなものではなく、きれいすぎる。キノコ雲の下で見られたのは本当に汚いもので、世の中にこんなことが起こるのかというような惨状だった。そういう状況がないとやっぱり伝わらないと思う。なにがなんでも核を使わせないようにしなければいかんという決意みたいなものに、なっていかないんじゃないか」


和田征子さん

「渋谷の繁華街にキノコ雲がむくっとあるというだけでは、わかりにくいのかもしれない。これだと被爆の感覚を共有して、自分のものとして取り入れることができるかというところがちょっと難しいかな」

キノコ雲の下で起こったことを、わい小化させずにしっかり伝えてほしい。

国内外でみずからの経験を訴え続けてきた2人は、被爆の実相が正しく理解してもらえないもどかしさがあることも、打ち明けました。

被爆者の思いを聞いた中村さんは、今回のコンテンツではキノコ雲を正確に再現することはできないと説明した上で、被爆の実相を伝えていくためにも、新しい手法を試みる必要性を訴えました。

中村さん

「同世代の人たちの中で原爆の実相というものがあまりにもショッキングすぎて、事実なのでちゃんと向き合わなければいけのに、触れたくない情報になってしまっている。被爆者の方々がいなくなる世界がすぐそこに来ている中で、もっと世論を大きくして核兵器をなくすために動ける人を増やしていかなければいけない時に、そこの入り口の部分を工夫したい」

およそ2時間にわたって意見を交わし、核問題に関心を寄せるきっかけとしてコンテンツを広めていくことに、田中さんと和田さんは理解を示してくれました。

2人の意見を踏まえて、少しでも被爆者の思いが伝わるように「核はまた、いつ使われるかわからない」というメッセージが流れるようにしました。

中村さん

「見るに堪えない原爆の被害にきちんと向き合う作業は大事だけれど、それ自体がこの問題に向き合うことを阻む要因にもなってしまっている。今回の企画が、平和な世界しか生きたことがない私たちの間のクッションのようなものになってくれたらいい」

中村さんが考える「継承」

7月25日、渋谷で10代や20代の若者を集めた体験会が開かれました。

それぞれのスマホに映し出されたキノコ雲を見た参加者たちからは、驚きの声が上がりました。

参加者

「たった一発だけでも、ビルだったり鉄道だったり、いろんなものが一瞬にしてなくなってしまうという被害の大きさを考えるきっかけになる」

「目の前の景色が埋まってしまうとか、キノコ雲がビルの何倍も高いということを、実際にスマホで見るのと話で聞くのとは違う実感がある。そういう兵器が今もあることを考えると、めっちゃ怖い」

一方でこんな意見も。

参加者

「すごいとか、大きいという感想が最初にくるので、きっかけとしてはいいかなと思うけれど、何がその裏にあったのか、キノコ雲の下で何があったのかというところまで、思いをはせられたらいいなと」

公開後もコンテンツに対して、さまざまな意見が寄せられているといいます。


1回限りの企画で終わりにするのではなく、今回の結果を踏まえて被爆80年となる来年に向けて、核兵器の問題をより身近な課題として考えてもらえるように活動を続けていく。

それが中村さんが考える「継承」の形です。

中村さん

「被爆者の方が感じられた痛みや苦しみは私が想像できるものではなく、その怒りをそのまま受け継ぐことはできない。その代わりに、今の時代を生きる当事者として、核の問題を社会に問いかけ続けていくことが、被爆体験を継承していくことになると思うので、そういった人たちを増やしていく努力をこれからも重ねていきたい」

(8月10日「サタデーウオッチ9」で放送)

※「KNOW NUKES」の公開は9月30日までです。

富田良 社会部記者 2013年入局 長崎局で原爆を中心に戦争関連の課題や文化財をめぐる問題点などを取材。

科学文化部を経て、社会部で戦争や平和に関する取材を続けている



■シミュレーションは、何らかのシステムの挙動を、それとほぼ同じ法則に支配される他のシステムや計算によって模擬すること。simulationには「模擬実験」や「模擬訓練」という意味もある。 なお、「シュミレーション」は「シミュレーション」の語頭の2音を音位転換させたことによって生じた語形であり、誤りである。 ウィキペディア

まず、この記事がアップされたことに興味があった。なぜなら、これまで「核」を扱った記事サイト、コンテンツは、アルゴリズムで排除されるのが通例であり、まさにアンタッチャブル域だつたからである。多分このnoteのアルゴリズムも作動して、目隠し状態は必至だと思われる。

だから、事態はそんなことではなく「いままでだれもしなかった核の悪癖を媚びずに正直に扱った」ことが賞賛だし、その勇気が素晴らしいとおもった。
それ以上の言葉はない。

画像 米国で進む“VR核実験”……その課題とは - Mogura VR News 核兵器の恐ろしさを疑似体験できるARコンテンツ


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