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ピアノの鍵盤が重いとか軽いとか

ピアノを弾いたときの鍵盤の重さには「だいたいこのくらいが適正」と言う基準があります。

でも実際には重さは1台ごとに結構ちがいます。ある程度は調整で変えることもできます。

それがベストな重さなのかどうかは究極的に言えば好みです。重いタッチが好きな人もいれば、軽く弾けるほうが良いケースもある。

良い重さと悪い重さがあるとすれば、僕はひとつの基準として「意図された重さなのかどうか」だと考えています。設計者や調律師、弾き手が意図した重さはそれが極端なものだったとしても良い重さであると言えます。

それは言い換えれば「再現性があるかどうか」

「たまたま重い」は良くない

例えば、鍵盤の支点が汚れて動きが鈍いことで重くなっているケースがあります。あとは湿気でハンマーが動きづらいとか。逆に乾燥による調整のずれで軽くなっていることも。

これはもし弾き手の方が気に入っていても、「悪い重さ」です。たまたま重く(軽く)なっている状態はいつか変わってしまう可能性をはらんでいます。キープが難しく、狙ってその重さにすることができない。「悪い」をコントロールするのは難しくて再現性がありません。

ピアノは人の意思と手が入って秩序が保たれていることが重要です。言葉にするならば「重くしてある」はOKで、「重くなっちゃってる」はNGという感じでしょうか。

納得感のあるバランス

鍵盤の重さに不満がある場合に、実際には原因が重さには無いケースが結構あります。

「鍵盤が重い」と言うご相談でピアノを見てみると別にそんなことはなくて、十分な音が出ていないだけだったり。逆に鍵盤はかなり重いのに、音が出過ぎていることで「軽すぎる」と感じてしまったり。

「この重さでこのくらいの音が出る」と言うバランスは大事で、それがいびつだと弾いていて違和感が大きくなります。マリオカートでクッパの鈍い加速力なのに最高速はヨッシー並の遅さだったらイライラします。かと言って逆だと速すぎて操作が難しい。

なので調律師は、「鍵盤が重い」を解決するときに鍵盤の重さ自体にアプローチするのか、音の方に手を入れるのか(はたまた両方か)を判断することになるのです。

重さも音もいろいろ

と、鍵盤の重さについての考え方を簡単に書きましたが、実際には物理的な「重さ」の中にもいろいろな要素があります。もちろん「音」にも同じく。

それに弾き手の重い軽いの基準が他のピアノ(多くはレッスンで弾くピアノ)にあることも少なくなかったりで、なかなか一筋縄では行かないところでもあるのです。

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つくし@ピアノ調律師の書斎
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