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アップライトピアノの左のペダルって、いつ使うの?

これホントよく聞かれます。

右のペダルのように誰しもが使うわけではない。そもそも踏んでも何かが変わった気もしない。謎のペダルですよね。

実は微妙に変わってるんです

このペダルは「ソフトペダル」と言う名称で、踏んでいる間だけ音が少し小さく、少し柔らかくなると言う効果があります。

通常、ピアノのハンマーは4.5cmくらいの距離から弦を叩きます。

ソフトペダルを踏むとすべてのハンマーが前進して、弦にちょっと近づきます。

近い距離から弦を叩くので通常時より勢いが弱まって少しソフトになる、そんな構造です。

真ん中の弱音ペダルと一見用途が被っているように感じますが、弱音(マフラー)ペダルはあくまで防音用。ソフトペダルは一時的かつ音楽的な弱音が目的です。

…と言われて踏んでみても、たぶんほとんどわからないくらいの変化です。

なんでそんなペダルがついているのか。

それは、グランドピアノにも左ペダルがあるから。

身も蓋もない言い方をするとこれが理由です。

グランドピアノの左のペダルは「シフトペダル」と呼ばれています。踏むとハンマー全体が鍵盤ごと少しだけ右にスライドして、ハンマーが弦に当たる位置や叩く本数が変わります。

同じく音を柔らかくするペダルですが、こちらは結構音色が変わるので誰が聴いてもはっきり差がわかると思います。グランドピアノの左ペダルでの音色の変化は、太鼓の叩く位置を真ん中から端に変えるようなハッキリとした変化です。

アップライトピアノには構造的にこのスライド機構を入れられないため、なんとかそれに近い効果を生み出そうとしたのがソフトペダルの正体です。

わかりやすい変化も無いので、何のためのペダルかほとんどの方が知らなかったり、故障していると思うのも無理ないです。

踏むことで起こる「カラ」

実はこのソフトペダル、音色よりもタッチの変化が大きくて、踏んでいるあいだは鍵盤とハンマーに隙間ができる、専門用語で「カラがある」と言う状態になります。

通常、「カラ」は乾燥しすぎたり長年調整をしていないときに起こる鍵盤周りの不具合です。隙間があることで力が伝わらずスカスカな弾き心地になるので、カラがある状態はタッチ的には本来良くないことです。

ソフトペダルを踏んでいるときにはこの「カラ」が一時的に発生しています。音色変化があまり無いうえにタッチは良くない変化をしてしまう...なんとも不憫なペダルではあります...

弾きづらいことには変わりないのですが、その独特なタッチ感を楽しむために踏んでみるのも良いかも知れません。

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