沈丁花
かたりあひて
尽しゝ人は先立ちぬ
今より後の
世をいかにせむ
明治の元勲・山縣有朋が、先立った盟友・伊藤博文を偲んで詠んだものだ。
「自分が最期を迎えるとき、惜しむ気持ちを言葉にしてくれる人はいるのだろうか。」
そんなことを考えながら、テレビで流れるニュースをながめる。
梔子はその役目を終え、金木犀は自らを律した。
ふと窓の外を眺めると、木々は葉を赤らめ、落葉を待っている。
まだ半年ある春を待ち遠しく想いながら、ペンを走らせる。
誰しもが持つ「期待と不安」はいつの世も人々の心を弄んできた。
「少くとも僕の場合は唯ぼんやりした不安である。何か僕の将来に対する唯ぼんやりした不安である。」
芥川のこの言葉を理解したとき、人は完成するのだろうか。