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快適なおうち (小説120枚)

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あらすじ◆「快適なおうちを保ち続けたいの」。消極的なリカコは、結婚二年目の主婦。誰にも邪魔をされない世界で一番快適な場所―おうち―を作り上げ、夫・ユウトの帰りを待ちわびている。し…
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2017年8月の記事一覧

快適なおうち  5(ユウト  密会の果て)

快適なおうち 5(ユウト 密会の果て)

第5回<ユウト>

 ユウトは誰もいない公園のベンチにマナベミユと座り、マナベミユの生い立ちについて聞いていた。出身地のこと、両親が離婚して父親に引き取られたこと、その父親の転勤のせいでたびたび転校することになり苦労したこと、必死に勉強してなんとか大学受験に合格し、家を出てこの街で暮らし始めたこと、そして今の会社に入社したこと……。ユウトは常に彼女の話の聞き手となり、「そうなんだ」とか、「それは大

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快適なおうち 6  (リカコ  スーパーヘ)

快適なおうち 6 (リカコ スーパーヘ)

第6回<リカコ>

植物園を出ると、公園にいた人々は嘘のようにほとんどいなくなっていた。きっと皆家に帰ったのだろう。リカコは駅に向かって歩いていく。私も帰らないといけない。帰るべき家がある。行きしなにとおり過ぎたベンチにはもう誰も座っていなかった。
 地下鉄に乗り、自宅の最寄駅で降りると近所のスーパーに立ち寄った。トマトや胡瓜が安いので手に取ってカートの籠に入れる。これでサラダを作って、あとは

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快適なおうち 7  (マナベミユ)

快適なおうち 7 (マナベミユ)

第7回<マナベミユ>

これで大丈夫。
 マナベミユは、カツラギユウトにメッセージを送信したあと、ふう、と大きくため息をついた。スマホを鞄に戻し、暗い玄関で、しばらく床に座って目を閉じていると、メッセージの着信を知らせるバイブの鈍い音が響いた。急いでスマホを取り出したが、届いていたのは、「満足度90%!」と銘打たれた基礎化粧品の広告で、マナベミユは舌打ちをしながらその画面を閉じ、自分がカツ

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快適なおうち 最終回  (ユウト帰宅)

快適なおうち 最終回 (ユウト帰宅)

最終回<ユウト帰宅>

 電車を降りるとすでに薄暗くなっていた。ユウトが歩く振動にあわせて、右手に提げたコンビニの袋がかさかさと鳴る。一軒家の前をとおると、魚を煮ているような醤油の甘い匂い。ユウトはめずらしく、今日の夕飯は何なのだろうと思う。今頃、リカコも準備をしているはずた。
すれ違った野良猫がミャアと鳴く。ユウトは思わず袋を持ち上げて、隠すようにした。後ろから、再び、ミャアミャアと鳴き声

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