提言⑥ サテライトキャンパスの誘致
学生の声が聞こえなくなった。
一昨年、我が町の中心部にある私立病院が市内の別の場所に移転したことに伴い、その病院に付属する高等看護専門学校が移転先で新たなキャンパスを構えた。
新たな移転先も中心市街地ではあるのだが、駅や官公庁からは離れて、交通の便のいいバイパスに近いところに建設されたため、また中心部から学生がいなくなった感が強い。
「また」と書いたのは、これまでも、中心部から郊外へと移転する高校があったからだ。
自分が生まれてから、県立高校、私立高校合わせて3校が郊外へと移転した。
もちろん生徒にとってみれば、広い校舎や運動場が確保できて、のびのびと成長できる環境が整っていることは素晴らしいことだ。
一方で中心部から高校が移転したことは、そのまま町の活力が減退している原因でもある。
高校に限らず、店舗、住居など中心市街地から郊外への移転に伴い、中心市街地は空き家だらけとなって空洞化。
近年では感染症の拡大もあって、町に出る人も少なく、本当に寂れた街となってしまった感がある。
それでも、若手を中心に、古い建物をリノベーションする動きが活発となり、老朽化したデパートとレトロな食堂を復活させたプロジェクトは話題を呼んだ。
プロジェクトの当初は、休日をはじめ多くの家族連れでにぎわったが、感染症の拡大の影響もあって、残念ながら賑わいを戻すまでには至っていない。
また、第2、第3のプロジェクトも少しづつではあるが進んでいるのだが、「街を変える」起爆剤となるまでは行っていない。
このままでは、わずかな子どもと多くの高齢者の街になる。
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国では、地方創生のために、大学の地方移転(サテライトキャンパスの誘致)の取り組みを進めている。
国が進める地方創生の動きの中で、サテライトキャンパスの誘致は、研究開発拠点としての産業との連携や、若者の雇用という意味で非常に大きなカギとなるが、なかなか進んでいない現状にあるようだ。
大学側としては設置に係る「助成金」や運営コストの支援を求めているが、設置に関する経費はトータルで数10億円~100億円以上かかる場合もあり、地方自治体側が「大学と条件で折り合いがつかない」ため断念している例も多いようだ(「東京圏の大学の地方サテライトキャンパス等に関する調査研究業務」(平成30年度)より)。
また、地元にある既設の大学は新たな高等教育機関の設置には反対だ。
新たな大学設置の影響で、自分の大学の生徒が減少したとすれば、私立大学にとっては死活問題である。
莫大な費用と地元の大学への配慮等様々な理由により、なかなか地方へのサテライトキャンパス移転が進まないのもよくわかる。
その一方で、廃校になった地元の小中学校を利用しながら、首都圏の大学及び地元の大学とコラボし、成果を上げているのが「陸前高田グローバルキャンパス(愛称:たかたのゆめキャンパス)」である。
この施設は、岩手大学と立教大学との共同運営を行っており、陸前高田市も補助金を拠出するいわゆる「三位一体のサテライトキャンパス」と言える。
実際に学生が通学しなくても、合宿であったり、フィールドワークの拠点であったり様々な活用が考えられ、また地方と都市の関係人口の構築にもつながる。
こういった取り組みを参考に、我が町もサテライトキャンパス誘致に取り組むべきと思う。
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