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「政策論争」を考える~分断のアメリカ、協調路線の日本、形骸化の地方議会~

アメリカ:大統領選挙における分断

11月5日(現地)アメリカ大統領選挙が行われ、トランプ氏が4年ぶりに大統領に返り咲くことが確実になりました。

【ワシントン=田島大志】米大統領選は5日、投開票が行われた。米メディアによると、返り咲きを目指した共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)が当選を確実にした。民主党候補のカマラ・ハリス副大統領(60)は女性初の米大統領を目指したが、及ばなかった。

トランプ氏は激戦州で健闘し、全米50州と首都ワシントンに割り当てられた選挙人538人のうち、過半数の270人以上の獲得を固めた。

トランプ氏は、2023年3月に不倫の口止め料を不正に処理したとするニューヨーク州法違反で米大統領経験者として初めて起訴された。同年8月には、自らの支持者が21年に引き起こした米議会占拠事件に絡んでも起訴され、4件の刑事事件を抱えながらの異例の選挙戦に臨んだ。

今年7月には、ペンシルベニア州バトラーでの選挙集会で演説中に銃撃を受け、耳にけがを負った。この銃撃を含め、2度の暗殺未遂事件に巻き込まれた。
選挙戦では、不法移民やインフレ(物価上昇)の問題を中心に厳しい政権批判を繰り広げ、ハリス氏を攻撃した。スローガンの「米国を再び偉大に」の頭文字から「MAGA(マガ)」と呼ばれる中核支持層は健在で、白人労働者層を中心に支持を広げた。

(読売新聞オンライン https://yomiuri.co.jp/world/uspresident/20241106-OYT1T50216/より引用)


トランプ氏の大統領返り咲きについては、日本のマスコミ、識者から大きな懸念が寄せられています。

東京新聞の社説では、トランプ前大統領が米大統領選で勝利を確実にし、再び就任することがアメリカと世界に与える深刻な影響を論じています。分断と「米国第一主義」の再来により、民主主義を牽引すべき超大国が内向きな姿勢を強め、国際的な権威主義の台頭が進む懸念が指摘されています。

トランプ氏の対立的なリーダーシップは、批判者への攻撃や支持者の熱狂を煽る姿勢として現れており、その行動は外交にも影響を及ぼす見込みです。再任後、貿易や防衛負担の問題で同盟国への圧力が強まる可能性があり、ウクライナや台湾問題での対応も注視されています。また、気候変動対策への消極姿勢が示され、パリ協定からの脱退も視野に入っていると報じられています。

トランプ氏の大統領就任については、おそらく多くの方がこういった懸念を持っているのではないでしょうか?

選挙戦において見られたハリス候補への罵詈雑言に嫌悪感を抱いた人も少なくないと思います。
(これはハリス=民主党でも同様で、トランプ氏を激しく批判していました)

まさにアメリカの「分断」を象徴するような選挙であり、トランプ氏が大統領に就任することで、これまで以上の分断が進むと思われます。


自分(自分の支援者)の思い通りにやる。相手の主張に耳は傾けない。
これは「政策論争」ではありません。

こういった態度で、本当に国民が求める政策が実施されるのでしょうか。

日本:衆議院議員選挙後の「ハング・パーラメント」における政策論争

一方、10月27日に衆議院議員選挙が行われた日本では、与党が過半数を確保することができなかったことから、「ハング・パーラメント(宙づり議会)」と呼ばれる不安定な状況となっています。

欧州、特にドイツの国会などではこの「ハング・パーラメント」がしょっちゅう起きているとのことですが、日本ではあまり例がありません。
終戦の混乱期を除けば、1993年に自民党から政権交代した細川連立内閣の総辞職を受け翌年誕生した羽田内閣が「ハング・パーラメント」状態となったことがありました。
(非自民・非共産の8党連立内閣から社会党、新党さきがけが離脱し、連立与党が少数与党となる)

この時は、羽田内閣はわずか2か月で総辞職し、その後、自民党と社会党、新党さきがけが連立を組み、当時の新生党を中心とした連立与党から政権を奪還。村山富市氏を首相とする連立政権を樹立しました(自社さ連立内閣)。

現在の自公連立政権は、キャスティングボードを握る国民民主党に秋波を寄せるなど少数与党として厳しいかじ取りを迫られていますが、特別国会召集を前に次のようなニュースが入ってきました。

衆院の委員長ポスト配分を巡り、自民党は7日、予算委員会の審議を取り仕切る予算委員長を立憲民主党に譲る方針を与野党協議で野党側に示した。首相ら全閣僚が出席する予算案審議の議事進行で、野党が主導権を握ることになる。

10月の衆院選で立憲民主党など野党が大幅に議席を増やしたことから、17ある常任委員長と8つの特別委員長について、野党側は議席数に応じたポストを求めていた。自民は衆院選前と同じ計四つを立憲側に配分する案を示したが、野党は拒否し、協議が続いていた。

(毎日新聞ウエブ記事 https://mainichi.jp/articles/20241107/k00/00m/010/084000cより引用)

これは個人的には結構衝撃的なニュースで、予算委員会といえばこれまで与党の「強行採決」や「審議打ち切り」など、数の力による強引な議会運営が行われてきたわけですが、与党が委員長ポストを明け渡すとなると、主導権を野党に握られることになります。
予算案作成までの過程で、かなり野党の主張を飲まなければならなくなるほか、今回の衆議院議員選挙でも争点となった「政治とカネ」の審議について、多くの時間が割かれる可能性もあります。

大事なポストを野党によく譲ったなぁ・・・という感じですが、おそらく立憲民主党が握るであろうこのポスト、野党にとってもこれは試金石で、これまでの「政府案にはなんでも反対」という態度は許されず、責任のある”ふるまい”をしなければならないのは言うまでもありません。

いずれにせよ、この「ハング・パーラメント」という政治体制は、国民の声を国会に届けるという意味において(今のところ)健全な形になっていると思います。

与野党も相手の主張を認め、譲り合いながら政策論争を闘わせ、政策を進める。

分断が進むアメリカと異なり、私は、日本の国会が(今のところ)本当の民主主義に近づいている、そんな気がしています。

地方議会でも政策論争を

翻って地方議会ですが、活発な政策論争が行われているか、と言えば、首をかしげざるを得ません。

もちろん、地方議員が様々な政策に精通し、活発な議論を闘わせている・・・そんな議会もあることでしょう。
一方で、行政当局の様々な提案に追認するだけの「形骸化している地方議会」も多いのではないか、と感じます。

地方自治体は二元代表制です。
共に住民を代表する首長と議会が、適度の緊張感とバランス を保ちながら、議会が首長と対等の立場で、地方自治体の運営の基本的な方向性を決めたり、監視したり、政策の方向性を決めたりすることとなっています。

国会のような議員内閣制と違って、議員の中から首長を選ぶわけではないので、地方議会には「与党」も「野党」もありません。
「自分は首長と同じ政党なので、政権与党として市当局案にはなんでも賛成する」
などとのたまう地方議員もいますが、そんなことでは政策論争になろうはずがありません。

いずれ、地方議員は、市民の声を市政に届けるのはもちろんのこと、行政当局と政策を対等に論じあえるようにならなければならない、と思います。

我が花巻市議会も「政策論争」のできる地方議会となるよう、微力ながら活動していきたいと思っています。

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