見出し画像

提言④ 地方公務員のロールモデルをつくる

 実は地方公務員はかわいそうな存在である。

 市民からのクレームの中で
 「オレが払った税金で食わせてやってるんだぞ」
 と言う捨て台詞を聞いた人も多いことだろう。

 人口10万人以下の地方都市になると、大卒の就職先は限られていて、特に文系の就職先だと、公務員になるか、先生になるか、地元の農協(地方銀行)職員くらいしか思い浮かばない。

 そして、地方にしてみれば「高給取り」の部類に入るから、自分の周りの環境に不満を持っている人にとっては格好のクレーム先となる。

 また、(当たり前のことだが)定時で帰ることもできるし、(これも当たり前のことだが)残業手当もちゃんと出る。

 こういう当たり前のことが行われない(ブラックな)企業があるので、地方公務員が羨望の目で見られているのかもしれない。

 
 一方、現実問題として、地方公務員が楽かと言うとそんなことは決してない。

 一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会が令和2年度に行っている調査では、精神および行動の問題で長期病休(疾病等により30日以上休業又は1か月以上の療養)の方は、ここ15年で2.3倍に増えている。
 確かに心に起因する病気等で長期療養する職員は確実に増えている感がある。
 以前記事として書いたこともあるが、自分が退職する最後の職場では、同じ係で年間に3人もの職員がメンタルヘルスに起因する病気で休まらなくてはならない事態が生じた。
 その係の主な業務は、様々な計画策定だったから負担も大きかったのかもしれない。特に、その年は、国から補助金と言う飴をぶら下げられ、「飴を手に入れるための計画」を短期間で策定しなければならないプロジェクトがあったので、そうとう大きな負担だったと思う。
 今思えば、彼らのキャリアはどちらかというと窓口業務を主としていたこともあり、畑の違う仕事に戸惑っていたのかもしれない。
 
 かつて、地方自治体で働く職員と言えば、窓口業務や庶務業務(人事や給与、旅費等庶務的な仕事を各部署において処理する業務)などに携わる職員が多かったが、地方行政サービス改革の取組状況等に関する調査等の結果(総務省:平成30年)によれば、全市町村の約20パーセントが窓口業務を民間に委託し、全市町村の約25%が庶務業務をシステムとして集約し各部局の庶務担当者の業務の軽減を図っている。

 こういった定型的業務が少なくなっていく一方、住民の多様なニーズに応えるための非定型的業務が増加し、そのスキルが追い付いていないため業務上のストレスを抱えている職員も多いことだろう。

 キャリアコンサルタントの目から見れば、ビッグファイブなどの適性診断により、職員の向いている部署に配置すればこういったメンタルヘルスの問題を少なくできるはずである
 もちろんそんな簡単なことではないとは思うが、「経験」や「勘」に基づく人事よりはよっぽどマシである。

 自分に適した職場で働くと、自分に余裕が生まれ、仕事外の生活もポジティブになってくる。
 余暇を活用して、自分の能力(スキル)を高める人もいるだろうし、スポーツなどで体を鍛える時間もできるだろう。
 
 そういった仕事外での「学び」や「活動」が、人生を豊かにしてくれるし仕事にも好影響を及ぼす。
 そういった「仕事外」での(偶然の)人との出会いが「弱いつながり」となって、あなたを新たな場所へ連れていく。

 心理学者のジョン・D・クランボルツは、偶然の出来事がその人を成長につなげるという「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」を唱えた。

 僕らの人生はまさに「偶発性」の連続である。

 適材適所で地方公務員の仕事を楽しみながら、いろいろなことに出会いながら成長し、人生を豊かにしていく・・・そんなロールモデルをつくること。

ここから先は

28字

挑戦の記事です。賛同いただける方は購入していただけたらありがたいです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?