提言⑪ 「約束された報酬」である補助金行政から脱却すること
中心市街地の商店街の振興策の記事でも話したが、ある団体に補助金というニンジンをぶら下げてやる気を出させる・・・という政策はもはや限界にきている。
それは「住民のやる気を奪う」と言う意味からもまっとうな政策ではない。
あなたは「アンダーマイニング効果」と言う言葉を聞いたことがあるだろうか?
「アンダーマイニング効果」とは、本来は好奇心や喜びといった「内発的動機づけ」によって行動していた相手に対し、報酬や褒美といった「外発的動機づけ」を提示して、結果としてモチベーションを低下させてしまう心理現象のことを指す。
「アンダーマイニング効果」の証明としてよく知られているのが、心理学者エドワード・L・デシとマーク・R・レッパーが行った2つの実験だ。
デシは、「アンダーマイニング効果」を図るため大学生を対象に次の実験を行った。
この実験は、Aグループの2日目にインセンティブを与えた結果、パズルを解くことが、自分の興味という「内発的動機」ではなく、報酬をもらうためという「外発的動機」に変化してしまったため、インセンティブをもらえなくなった3日目に著しくモチベーションが低下したということを証明した。
一方レッパーによる実験は、次のとおりだ。
この実験におけるAグループも、お絵かきという「内発的動機」をお菓子という「外発的動機」にすり替えたことによるモチベーションの低下事例と言える。
しかし一方で、Bグループのように、約束されていない報酬に対しては、モチベーションの低下がみられない。
すなわち、「約束された報酬」が「内発的動機」を低下させる。これが代表的な「アンダーマイニング効果」である。
*****
住民のやる気を奪う「約束された報酬」=補助金と考えれば、わかりやすいかもしれない。
先述した「商店街振興のための補助金」のみならず、各種団体への補助金、地域集落のための交付金など、住民へ直接的、間接的に交付するそれらの補助金、交付金が住民のモチベーションの低下を招いていると言ったら言い過ぎであろうか。
その中でも、例えば地域団体への交付金などは、すでに年度当初の交付額が決まっている「約束された報酬」である。
我が町の例で言えば、この「約束された報酬」を、どのように使うかはそれぞれの地域に委ねられていて、法に背くようなことや、住民への酒類の提供など使途が制限されるもの以外は自由に交付金を活用することができる。
できるだけ自由に使えることで、それぞれの地域の創意工夫が図られることを意図した交付金であるにもかかわらず、多くの地域団体は、その交付金を消化することに努める。
無理に新しい事業などを行わずに、その地域団体を構成する団体、例えば自治会や町内会などの事業にその交付金を再交付することのみに力を注いでいる地域団体もある。
こうやって、その地域団体は交付金のトンネル補助としての機能しかもたない。
こうなると住民のモチベーションどころの話ではない。
ただ、交付金をトンネルさせ、末端の自治会、町内会でも「お金が来るから仕方なく(ほとんど使いもしない)備品を購入した・・・なんてこともザラにある。
まさに「アンダーマイニング効果」の弊害である。
いったんこの「約束された報酬」を減額してみてはどうか。
そしてその減額した分で「チャレンジ枠」を設け、工夫された事業を実施する地域団体に関しては別枠で交付金を支給する制度に改める。
おそらく地域からの反発はあるだろうし、約束された報酬である交付金が減額した場合、住民のモチベーションはさらに低下することであろう。
だが、「チャレンジ枠」を目指して、新たな創意工夫する団体も出てくるはずである。
地域団体に対して一律に支援するのではなく、本当に住民のために奮闘している、知恵を出している団体に支援するスタイルに改めていくことこそ、地域が自分の地域を本当に良くしたいと考えることにつながってくる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?