提言⑤ 部活動に変わる「ゆるい活動」の提案
ついにというか、やっとというか、部活動改革の流れはまったなしの状況になってきた。
(twitter https://twitter.com/YahooNewsTopics/status/1518725289957679104より引用)
「休日の部活動」地域移行は、2023年度から原則全国で取り組まなければならないことになっている。
現在、都道府県、市町村を中心に、その方法等について検討を重ねているが、実際のところは国の動きを「静観」しており、地域によっては全くと言っていいほど関心が薄いのが現状だ。
これに業を煮やしたのか、有識者会議は、「改革集中期間」と位置づけ、半ば強引な方法で2025年度までに全国で「休日の部活動」を地域移行しようと提言している。
この流れは基本的に賛同する。
休日の「部活動」に関しては、地元の教育委員会の会議等にも出席して、意見を述べてきた。
関心のある学校長や有識者もいる一方で、現場で部活動を指導している教員のほとんどが無関心か、もしくは国や県の方向性を待っている状況だ。
体育協会や各種スポーツ団体も同様の状況で、自分たちの地域の中学校の部活動や競技種目にはどういう課題があって、それについてどう取り組んでいかなければならないか、ということに目を背けているようにも見える。
これは全国的にも似たような状況と思われ、そういったことからも「強制的な」方法で、改革していこうとする有識者会議の提言は意味のあるものと言える。
そして、この提言の中で特筆すべきは「地域移行に伴って生徒がスポーツ団体に会費を払うこと」を明記するということだ。
はっきり言って革命的ですらある。
これまでの日本における「部活動」は教育の一環として、遠征に伴う旅費や備品整備などの一部を除いては原則無料で行われてきた。
指導者が学校の教員であることから、「指導の対価を求めない」文化が定着してきた。
それは部活動だけでなく、地域のスポーツ少年団活動も同様で「子どもに運動を教えるのはボランティア」が半ば当たり前となり、教員であれ、保護者であれ、民間のコーチであれ、指導者自らが「地域の子どものために教えることは尊いことであり、お金をもらうなんてとんでもない」という禁欲的精神が蔓延している状況にある。
もちろん、民間のスポーツクラブや町クラブは指導料の対価として子どもたちから月謝をもらって活動している。
それはいわゆる「業」として行っているもので、部活動とは一線を引いて考えられてきた。
しかし、これからの部活動は、指導料を対価として支払うことを原則としながらも、指導者のスキルや活動のレベルによって価格の差がつけていくようなスタイルに変わっていくだろう。
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今後の「部活動」に変わるモデルとして一つの私案を紹介したい。
部活動加入は今でも原則「任意」加入である。
しかし、先生が教えていること、非行防止等の理由で半ば強制的に加入させられている事実もある。
まずこれを本当の意味での「任意加入」とすること。
一方で部活動の強制加入は、「体力の向上」や「仲間づくり」という機能を果たしてきたことから、それに代わる「ゆるいスポーツ活動」の場を提供する。
これは、小学校や中学校の学区を超えた「居場所」の意味合いをもつものならなおいい。
この「ゆるいスポーツ活動」は、体育協会や総合型地域スポーツクラブが運営し、児童・生徒(の保護者)が対価を払う。
対価を払うことにすると、参加しない児童・生徒もいることから、その金額は民間のスポーツクラブ等にくらべると割安なものとし、市町村によっては教育クーポンなどの仕組みを導入してもいいだろう。
「ゆるいスポーツ活動」に飽き足らず、より高いレベルでその競技活動をしたい児童・生徒は、民間のスポーツクラブ・町クラブに行けばいい。
そうやって「ゆるいスポーツ活動」と「民間のスポーツクラブ・町クラブ」をすみわけする。
これは文化部の活動も同じで、子どもの数が減少する世の中にあって、各学校の吹奏楽や美術、写真、技術、パソコン等の文化部が廃部になってきている。小学校、中学校の学区を超えた「ゆるい文化部活動」というスケールメリットは、文化的活動を志向する児童・生徒の受け皿となりうる。
今回の有識者会議の提言がそのまま採用されるかどうかはわからない。
地域の反発や、学校側の抵抗ももちろんあるだろう。
一番のボトルネックは、スポーツ・文化活動における「ボランティアが当たり前」の慣習なのだが、実際に負担する側の保護者の理解がすすむかわからないし、大きな抵抗も予想される。
それでも、これまでの慣習を変えていかないことには、何も進まない。
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