提言⑩住民主導による中心市街地活性化
前回の記事で、市町村のブランド化における「選択」と「集中」について触れた。
これは、ブランド化に限らず、限られた予算の中での「選択」と「集中」という観点による事業執行はこれまでも行われてきた。
しかし、一方で地方特有の「しがらみ」の中で、事業効果が薄いにもかかわらずいまだに「やめられない」事業も数多く残存しており、地方自治体における市政運営の難しさを感じざるを得ない。
特に、地方の市町村における『中心市街地の活性化』というテーマにおいては、これまでも多くの市町村が補助金等の予算を投入して支援をしてきたが、全国でも成功例が数えるほどしかない。
地方の多くの市町村は、中心市街地にある衰退している商店街の組合等に「まちづくりのため」と称して補助金等を交付して活性化を促している。
そこで行われるのは、「商店街のイベント」であったり、花壇整備や看板などの「環境整備」だったりするのだが、その事業を行うことによって、年間を通じて商店街全体の売上が上がるとか、新規に事業者が参入するとかい
った例を聞いたことがない。
もちろん、商店街の方々は、自分のまちの商店街振興のために様々な努力をしていて、その活動を否定するものではない。
要は、短期的なイベントや環境整備等により一時的に売り上げが上がるものの、恒常的な商店街振興につながっていないことが問題なのである。
大量生産、大量消費が当たり前の社会になり、多くの消費者は交通の便のいい「ロードサイトショップ」で買い物をするようになった。
飲食や服飾、家電等の大手のチェーン店が、幹線道路の沿線に店を構えるようになり、複数の店舗が集まる「モール」は、平日、休日を問わず賑わいを見せている。
その「ロードサイドショップ」に対抗すべく、単発のイベントを行ったとしても、大きな成果を生むのが難しいことは目に見えている。
それでも、何かしないよりはマシという意識で、商店街も生き残りをかけて、様々な工夫を凝らして集客を図ろうとする。
その努力に市町村は補助金を交付して活性化を促す。
だが、大きな成果は見えてこない・・・。
これが多くの市町村が抱える「衰退している中心市街地における商店街の振興」の現実の姿である。
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商店街の活性化の模範事例として知られる高松市の「丸亀町商店街」は、地元住民が街づくり会社を立ち上げ街を再開発したことで知られる。
ここで、重要なのは「住民主体のまちづくり」であるということと、その中心となるまちづくり会社が「行政からの出資を5%」とする民間主導の第3セクターであるということだ。
もちろん行政の支援や、有識者からのアドバイス等があるのはいうまでもないが、主体となるのは「住民」であり、「住民」が外貨を稼ぐために街全体をマネージメントしていく。
おそらく、住民の方々も「失敗したら自分たちで責任を取る」という覚悟で事業に取り組んでいることだろう。
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多くの市町村の「中心市街地の活性化」施策には「甘え」の構造がある。
先に挙げた「商店街のイベント」は、補助金等の支援がなくてもやる覚悟があるのか?それくらい本気のイベントなのか?
「ロードサイトショップ」に勝てるだけの「差別化」が自分の商店街でできるのか?
商店街振興のためのマーケティングを行っているのか?
など、住民が考えてやれることはたくさんある。
しかしながら行政が「補助金」というニンジンをぶら下げるので、そこに甘え考えることをやめてしまう。
イベントが失敗しても自分の懐が痛むことはないので本気にならない。
行政でも、事業効果をちゃんと図ることをしないので、このイベントで何千人が商店街に訪れた・・・ということが成果となってしまう。
それはあくまでも「活動」における指標であって、「成果」の指標ではない。「成果」は、この商店街の通年を通した売上増のはずである。
この「甘えの構造」を断つこと。
まずここから始めなければならない。
しがらみで難しいかもしれないが、住民が本気にならなければ中心市街地の活性化などできるはずがない。
もしも、行政が手始めに支援するとしたら、「住民を本気にさせること」のはずだ。
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