![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/75637840/rectangle_large_type_2_cd607c8c435eaeaf2a534dedd3350ed7.png?width=1200)
損失回避行動に走った矢野阪神に未来はあるのか?
阪神タイガースが昨日のジャイアンツ戦に敗れて開幕戦から8連敗。
セ・リーグでは1979年のヤクルトに並ぶワーストタイ記録。
首位ジャイアンツとは開幕8試合にして7ゲーム差と、スタートダッシュに大失敗した。
なぜギャンブルスタート?阪神がベンチの采配ミスで9回のチャンスを逃して泥沼8連敗(Yahoo!ニュース オリジナル THE PAGE) #thepage_jp https://t.co/DDz3zRAseI
— THE PAGE(ザ・ページ) (@thepage_jp) April 2, 2022
(twitter https://twitter.com/thepage_jp/status/1510395647534456837より引用)
昨日(4月2日)のジャイアンツ戦。
3-5の2点差で迎えた9回表、3番糸井嘉男選手のタイムリーで1点差に詰め寄り、なおも9回一死一、三塁のチャンス。ここで期待の4番、佐藤輝明選手。
佐藤選手の打席の2球目に一塁代走の江越大賀選手が盗塁に成功し、一死二、三塁とチャンスは広がって、ジャイアンツの大勢投手が投げた5球目。
佐藤選手はショートへ詰まったライナーを打った。
普通であれば、そのままショートが捕って、二死二、三塁で5番の大山選手の打席に期待するところ。
しかし、三塁ランナーの近本光司選手が佐藤選手が打ったと同時にホームへスタートを切っていて、近本選手は打球を見てあわてて戻ったが、打球を捕球したジャイアンツのショート坂本選手から三塁へ転送が早く、ダブルプレー。
同点、逆転のチャンスが、一瞬にして消えてのゲームセットとなった。
近本選手のプレーは「ギャンブルスタート」と言われる。
1点もやらない前進守備を敷く守備側に対し、ボールがバットに当たった瞬間にサードランナーがスタートを切ることで、バッターの打球がゴロになってたとえ相手守備陣の正面に飛んでも、ホームでセーフになる確率を上げる・・・。イチがバチかの戦法である。
今回、佐藤選手の打球がゴロになった場合は、おそらく坂本選手がホームに投げてもセーフだったと思われる。しかし、ライナーになったので最悪のゲッツーとなってしまった。
試合後、阪神タイガースの矢野燿大監督は、この「ギャンブルスタート」は近本選手の判断ではなく、阪神タイガースの作戦だったことを報道陣に明かした。
矢野監督は「そりゃあもう…勝たないとダメなんで。もちろんギャンブルでいっている。こっちの責任で近本は悪くない」と作戦通りだと明かした。
https://news.yahoo.co.jp/articles/89ac53d2c63e979a0d559091d9cc0cd201189d65より引用)
まさかの8連敗を喫した阪神タイガースの選手の状態も心配だが、「ギャンブルスタート」という作戦をチョイスした矢野監督の状態がもっと心配だ。
人間は、負けが込んでくるとその損失を回避しようとして、普段とは違った行動をとるようになる。
それがダニエル・カールマンらが提唱した「プロスペクト理論」だ。
「プロスぺクト理論」は、
結果が不確実な状況において、ゲームで勝つ利益・負ける損害の確率を知ったうえで、私たちはどう意思を決定して行動するのか? という人の(一定の)行動心理。
とされる。
そして、この理論のポイントは
・人は利益を得る幸福よりも、損失をこうむる感情のほうが強い
・人は「利益」を目の前にすると失うリスクを避けて「安全に確保できること」を優先する
・人は「損失」を目の前にするとリスクを背負ってでも「損失を回避すること」を優先する
であり、ざっくりと言ってしまえば
「人間はリスクを回避したい生き物である」
ということになる。
以前の記事に書いたように、この理論のエビデンスとして様々な実験が行われている。
今回は、その実例は紹介しないが、負けが込んできた矢野監督が負債を取り返そうとして「ギャンブル」に走るという、通常ではありえない作戦をとってきたことからも矢野監督の心情が普段通りではないことに気付く。
一般言われている「ギャンブル」もまさに同じで、競馬やったことがある方なら分かってもらえると思うが、GⅠなどのメインレースで大負けした場合、最終レースに一発逆転を狙って来そうにもない大穴に賭けることがある。
損失回避したい気持ちが、通常であれば絶対買うことのない馬を買わせてしまう。
「これが来たら今日の負けは取り返せる」
と思う気持ちが、冷静な判断、分析を狂わせるのだ。
矢野監督はまさにこれと同じ状態になっている。
ふり帰れば、矢野監督はキャンプインの前日、チームのナインに向かって、「今シーズン限りでの退団」を明言したという。
シーズン前に退団することを明かすという戦略。
これは選手を鼓舞する意味で明らかにしたと思うが、これまでの試合運びや現状を見ると、かえって矢野監督自身を追い込んでいるような感もある。
そのプレッシャーが戦術の判断を鈍らせている要因なのかもしれない。
ちなみに負けが込んだ時に必要なのは、その負けをとりかえそうとしないことだ。
これはサンクコスト(埋没費用)といって、僕らは、「損失した分を回収するためさらに無駄に投資して損失を広げる」という過ちを犯すことがよくある。
こうならないためにも、一旦立ち止まって冷静になりゼロベースで考えることが必要だ。(なかなか難しいことではある)
このことは矢野阪神のみならず、僕らの日常でもいろいろなところで現れてくる。
うまくいかないとき、損したとき、負けがこんできたとき、それを取り返そうとは思わずに、その損や負けはできるだけ忘れて、再度たてなおす。
まだまだ長いペナントレース、矢野阪神もそれができれば挽回のチャンスはある。