「属人的マネジメント」VS「優秀なトップリーダー」
昨日のサウジアラビア戦から入る。
(twitter https://twitter.com/YahooNewsTopics/status/1488487797753217027 より引用)
まだまだ油断はできないが、「イナズマ純也(松木安太郎命名)」の活躍により、ワールドカップ本選出場に大きく前進したといっていいだろう。
昨日の試合に限らず、この予選を通じて「遠藤航」「田中碧」「守田英正」の中盤が見事に機能している。
最終予選の前半は「遠藤航」と「柴崎岳」によるダブルボランチを配置した4-2-3-1という布陣で戦いを進めていった。
しかし、初戦のホームで格下のオマーンに敗れるという失態。次戦の中国との試合は辛くも勝利したものの、昨日対戦したサウジアラビアとのアウエィ戦では、柴崎の不用意なバックパスから失点し0-1で敗れた。
がけっぷちに立たされた森保監督は、10月に行われたオーストラリア戦で、これまでの4-2-3-1というフォーメーションから、中盤に「遠藤航」「田中碧」「守田英正」の3枚を逆三角形に配置する4-3-3というフォーメーションに変更。その采配がズバリ的中し、オーストラリアに2-1で勝利。
その試合以降昨日まで5連勝。4-3-3という布陣が見事に機能している。
森保監督は、これまでの代表選での経験や実績が豊富な選手を中心に、新戦力を抜擢せず、固定したメンバーで戦うことが多い。
また、戦術(フォーメーション)に関しても、戦う相手により柔軟に戦術を変えるというよりは、固定したフォーメーションで戦い、そのシステムが不具合を起こしたときに変更するスタンスをとっている。
こうした選手選考や戦術に対し、批判する論調も多い。
久保や堂安といったオリンピック世代を抜擢せよ!という声も聞かれる。
実際に、最終予選を突破する確率は高くなったが、今年行われる本大会でこのままのスタンスで大丈夫なのか?という疑問は残る。
昨日の試合を見ても、輝きを放っていた中盤の3人が試合終盤には明らかに疲労の色が見えていたのにもかかわらず、遠藤航がロスタイムに原口に交代するまで、森保監督は3人を使い続けた。
森保監督には、リスクを好まない監督であることは確かであるが、リスクマネジメントが十分かというと決してそうではない。
例えば、この中盤の3人の誰かがが「ケガ」などの理由で代表選に出られなくなった場合、結果を出してきた4-3-3のフォーメーションが機能するかというと恐らく機能しない。
この中盤の3人だからできる「属人的システム」であり、ほかに代替えが効かない非常にリスキーな戦術といえる。
これが、多くのオプションを持ち、相手や状況によって戦術や人を変えながら戦う監督であれば、強豪国と対戦しても勝利、少なくとも引き分けに持ち込める可能性もあるが、現状の戦術のままであればその可能性は非常に低い。
大活躍している「イナズマ純也」も決してワールドクラスの選手ではない。昨日のシュートは素晴らしかったが、強豪国と対戦して同じパフォーマンスができるかといったら必ずしもそうはならない。
このように選手のパフォーマンスに頼る「属人的マネジメント」は、リスクが高い。
一方、優秀なトップリーダーが戦術を駆使して試合を戦うためには、チームとしての戦術の共通理解とその戦術を具現化できる人材の育成、そしてパフォーマンス向上のためのリーダーと選手の信頼関係が重要である。
それはサッカーの世界に限らず、我々の周りの組織でも必須のマネジメントである。
かつていた職場の話をする。
その職場では、優秀なトップリーダーが、ゴールを目指すための作戦をいろいろと考える。その戦術がはまれば、昨日のサウジアラビア戦の2点目くらい素晴らしいゴールを生むのだが、あまりにも高度すぎる戦術のため、なかなか選手がついていけない。
その職場にも、優秀な能力を備えた選手がいるのだが、縦突破が得意な選手をボランチに起用したり、守備的センスに優れた選手をワントップに起用したり、なかなかはまらない。
高度な戦術についていけない選手が離脱することもしばしばある。
代わりの選手も懸命にシステムに順応しようとするが、明らかにパフォーマンスは落ちる。
そもそも指揮官と選手の信頼関係が欠如しており、監督の指示だけを忠実に実行していればいいというプレーを最優先させているため、ピッチ上での状況判断ができない。
ゴールチャンスがあるのに味方にパスしたり、無理なドリブルをしかけたりする。
そのプレーに指揮官は激怒し、委縮した選手がまた同じようなパフォーマンスを繰り返す・・・。
素晴らしい監督がいて、素晴らしい戦術を持っているのにチームのパフォーマンスが向上しない原因がここにある。
それでも森保ジャパンのように、固定した戦術で短期間でチームを仕上げていく場合には、なんとかできるかもしれない。
しかし、長期的にチームを作っていく場合は、優秀なトップリーダーがいただけではなんともならない。
サウジアラビア戦からとんでもない場所にきてしまった。
すばらしい勝利の次の日、ため息のでる一日である。