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自治体財政を考える

10月16日から18日まで、全国市町村国際文化研修所(通称JIAM)において「地方財政制度の考え方と自治体財政」という地方議会議員向け研修に参加してきました。

実は「自治体財政」というのは、自治体行政の根幹をなす本質的なテーマであるにもかかわらず、多くの地方議会議員にとっては苦手な分野。
それは、単に議員の勉強不足ということもあるのですが、様々な専門的な財政用語が多いことに加え、財政指標も多岐にわたるため、それらのデータから自治体財政の現状を読み解くのはかなり難しい。
私も例年3月に開催される予算特別委員会、9月に開催される決算特別委員会における総括質疑で「自治体財政」の指標について質問したことがありますが、本質的なことがわかっていないとツッコミ不足の浅い質問になってしまいます。

そういった意味で、今回の研修は、基本的な地方財政制度から専門的な財政指標の解説、参加した地方議会議員の属する市町村のデータの比較、他自治体の事例解説など盛りだくさんのメニューで、非常に内容の濃い研修でした。

自治体財政は健全化している

今回の研修に参加した地方議会議員は63名。
今回の研修は、花巻市からは緑の風の会派の4名が参加しましたが、他にも複数の地方議会議員が参加しているところもあるので、52自治体の市町村の財政指標を比較検討しました。
今回、地方財政制度や、専門的な財政指標等の解説、市町村の財政指標の比較検討を担当していただいたのは、地方財政審議会の会長の小西先生。
知る人ぞ知る地方財政制度の第一人者で、著書もたくさん出していらっしゃいます。

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先生ご本人の著書なんですけど、ちらっと試し読みしてみましたがなかなか面白いです。
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さて、小西先生によれば、リーマンショックの影響があった15年~20年前と比較すると、現在はほとんどの自治体で財政は健全化しているとのことです。
今回データ比較した52自治体の財政指標を見ても本当に問題があるというところは見当たらないとのことでした。

小西先生によると、今後人口減少により税収は下がると見込まれるが、将来的に高齢者も人口減少が進み全体的な医療費の低下が予想されること、女性の正規雇用化などによる労働力人口が確保されること等により、自治体財政が破綻する可能性は低いとのことです。
やや楽観的かな、と思うところもあるものの、確かに自治体財政を悲観するよりは、適切なタイミングでアクセルとブレーキを効かせるメリハリをつけた財政運営をしていく必要があると考えさせられました。

以前も記事で取り上げましたが、花巻市の財政状況を見ると、ふるさと納税による寄付金収入のおかげで財政的に余裕があるいまだからこそアクセルを踏んで(チャレンジして)、将来にむけたまちづくりをしていく必要があるのではないか。
もちろん、今後の人口減少時代を迎えるにあたって、扶助費(社会保障費など)の増加や公共施設の老朽化対策等の経費増も考えられるので、そういった部分を踏まえながら効率的な財政運営をしていかなければならないのはいうまでもありません。

自治体財政の見える化を進める

今回の研修では、自治体財政の健全化を含めた先進事例の紹介ということで、鳥取県伯耆町(ほうきちょう)の町長の方、兵庫県川西市の副市長の方から講演をいただきました。
どちらの市町の事例も非常に示唆に富む話でしたが、共通していたのが「自治体財政の見える化」という視点でした。
伯耆町では、公表されている当初予算説明資料が41ページにも及ぶ詳細なもので、歳入歳出の詳細な説明はもとより、地方交付税の算定資料、基金の内訳、起債の内容・償還予定など、自治体財政の見える化を進めています。

また、川西市では、「川西市新時代創造プラン」と題する総合計画に基づく今後の財政見通しをたてて、持続可能な行財政体質を構築することとしています。
このプランでは、令和6年度から令和13年度までの財政収支の見通しはもとより、財政指標(実質公債比率、将来負担比率、基金確保比率)などの見通しをたてながら、行財政運営をしていくこととしています。


こういった事例を見ると、わが花巻市ではこの「自治体財政の見える化」をもっと進める必要がある。

特に総合計画における財政見通しは、非常にアバウトなもので、第2次花巻市まちづくり総合計画前期アクションプランは約300ページにも及ぶボリュームのあるものにもかかわらず、財政見通しはたった4ページしかありません。
花巻市の上田市長は常々「日々変わる社会情勢に応じて予算編成をする必要があり、細かい財政見通しをたてたとしてもその通りにはいかない」と話しており、詳細な財政見通しを策定することについては全く消極的です。

もちろん市民の方にとっては財政指標などわかりにくい部分も多いのですが、やはり詳細な財政的な目標をたてないと、財政運営が行き当たりばったりのものとなってしましますし、そのためにも「自治体財政の見える化」を図ることが必要と思います。

まとめ

今回の研修は自治体財政の在り方を考える、非常にいい機会となりました。
単純な自治体財政の問題ばかりではなく、事例発表で話があった財源確保のための事務事業の見直しや、決算分析による行政経営のマネジメント、PFIの取り組み事例など、いろいろな部分で大いに勉強になりました。

今回に限らず地方議会議員向けの研修は多く開催されており、地方自治における様々な問題、課題について学びの機会はたくさんあります。
様々な機会を活用して、地方議会議員はもっと学ばなくてはいけません。
地方議会議員が実力をつけることは、議会の活性化はもちろんのこと、よりよい自治体行政につながっていくことになると思います。

今後も積極的に研修に参加し、その成果を活かしていきたいと考えています。

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