カムバック アオハル !!(矢井田瞳「TIME CLIP」)

私の青春が帰ってきた。
矢井田瞳(ヤイコ)の最新のアルバム「TIME CLIP」を聞いている。
久しぶりに聴きこんでいる。

思えば、
ヤイコの音楽は私の青春のすぐそばにあった。
切なくて苦しくてとんでもなく楽しかった日々を、
ヤイコの音楽が彩ってくれた。

制服のブレザーのポケットにいれたウォークマン、
コンポの横に積み重ねられたMD、
ヤイコの曲でいっぱいだった。

初めて、ヤイコの曲を聴いたのは、
ヤイコがメジャーデビューした頃で、私は中学生だった。
当時は、J-POPを聞くのがなんだかダサく感じて、 
洋楽ばかり聴いていたけれども、
ヤイコの曲の格好良さはすぐにわかった。
まるで英語のように日本語の歌詞を歌って、
曲調はUKロックみたいで、
それは、知らない音楽だった。
そして、聞けば聞くほど、はっきりと姿を現わすスリリングな歌詞に、
夢中にならずにはいられなかった。
(これをきっかけに、私の中で邦楽ブームが始まる。椎名林檎や鬼束ちひろ、安藤裕子、YUKI、、、彼女らに出会うのに、そう時間はかからなかった。)

私が歳を重ねるのと同時に、
もちろんヤイコだって歳を重ねていて、
その音楽は、なんだか変形していって、
いつの間にか私の生活からは離れていってしまった。

幸せすぎたのだ。

いつ頃からか、気がつくとヤイコの作る音の形や歌詞は、
あまりに幸せが溢れ出していて、
なんだかつまらなくなってしまっていた。
彼女の音楽は、本当にいつの間にか、
私を魅了したあの頃よりずっと幸福の形をしていた。
私は、この幸せな音の塊をいつきいたらいいのか、
正直わからなかった。
特段、自分が不幸だったとかそんなことはなくって、
かといって、全て満たされて幸せというわけでもない。
普通な私は、いつからか、音楽を聴いて幸福を感じるより、
孤独の輪郭を縁取るような、そんな音楽に魅了されていった。

そんなことを思っていた矢先、
ヤイコのアルバムが目に止まった。
気持ち良さそうなジャケットの写真は、
初期のヤイコのCDのジャケットと同じ空気感を感じた。
それで、久しぶりに聴いてみることにしたのだった。

ヤイコ特有のアイロニーと諦観。
エッヂの効いた音。
曲調も初期の頃の曲たちの延長にあるように感じた。

私は、このアルバムを聴いて、ただひたすら嬉しかった。
ああ、これだよ!私の青春時代の音楽!
切なくて寂しくて、けれども踊りたくなるような日々。
そして、あの頃そのまんまでは決してない。
大人になって初めて知った苦しさ、もどかしさ、可笑しみ、そして、いびつな幸せ。
不自由で自由だった私の青春時代。
そして、自由でほんのちょっと不自由な、今の毎日。
そのどれもを輝かせてくれる。

ヤイコの伸びやかで明るい声。
いつも、その声の向こうにヤイコの笑窪を思い出す。
決して、暗い曲調ではないのに、ヤイコの曲は孤独を感じる。
私は、その感覚が大好きだ。
強がって、笑いながら泣いているみたいな。

私の青春は、泣き笑いの中にあるんだと、

ふと、ヤイコの音楽と深夜の空気に気づかされた。

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日々の日記→http://naritime.blogspot.jp
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