【第39回】あの日死んでいたのかもしれない僕は己を戒めた。
梅雨が明けた。
セミは鳴き、遠くの山々の先に見える青空にもくもくと入道雲が立ち上り、太陽が無くなってしまうのではないかと心配になるほど日差しがサンサンと降りそそぐ季節がやってきたのだ。そして、とにかく暑い。
小中高校生は、もう夏休みに突入しているそうだ。僕の通う大学では未だテスト期間なので勉強しなければいけない。なんとも羨ましい限りだ。その分、大学の夏休みは長いので良しとしよう。
夏休みの醍醐味は普段できないことができる時間が生まれることにあると思う。この時間を使って、どこかへ遊びに行ってもいい。家にこもって何かも打ち込んでもいいだろう。
特に小中高校生のときは平日は当たり前のように朝から晩まで学校があるので時間が生まれる夏休みは、かなり貴重だと思う。
かく言う僕も中学3年生のときに同じ部活の仲のいい友達と夏休みを利用して遊園地に遊びに行った。夏の大会を終え引退したこと、高校受験の勉強も本格化していなかったで時間があったのもある。
中学生活最後の夏、ということで思い出づくりに行ったわけだ。
そこの遊園地は地元ではそれなりに有名でプールと遊園地が併設されており、水着のまま遊園地でも遊ぶことができたと思う。海沿いの街で景色も良く夜景と海を一望できるような観覧車もあるようなところだった。
そして、これがものすごく楽しかった。具体的にはあまり覚えてないけれども、ただひたすらに遊び回り笑っていた気がする。
そんな楽しい日の夜に事件は起こった。こういったときには絶対にハプニングが起こる。
一日中遊び、疲れ果てた僕らは、最後に観覧車に乗ることにした。あたりはもう暗くなっていたのでかなり夜遅くまで遊んでいたのだろう。
どうやら夏休み期間ということで夜には花火をあげるらしい。観覧車から花火が見られるならこんな最高なことはない。
時間を調整して花火が上がるタイミングと同じくらいに僕らは観覧車に乗ったのだ。
だんだんと小さくなる町の夜景、打ち上がる花火。一番上に観覧車がたどり着いたとき興奮は最高潮に達していた。
言葉を選ばずに言うのであれば、この時の僕は完全に調子に乗ってたわけだ。
騒ぎ花火を見て話しをしていると、ふと観覧車の内部に「扉にもたれかからないでください」と書いてあるのを見つけた。
何を思ったのだろう。この時の僕は完全に興奮で頭がおかしくなっていたに違いない。
なんと僕はその扉にもたれかかったのだ!しかも「もたれかかるな〜?それはもしかして、もたれかかれってフリですか?」という今で言うイキったセリフを口走っていた。
ガタン!!
幸い開くことはなかったが、扉が完全に元の位置からずれていた。このとき完全に開いていたら僕は死んでいたのかもしれない。
さすがに地上60mくらい、つまり20階建てくらいのビルから落ちたら人は死ぬ。さすがに僕が猫だったりしたとしても死ぬ。
「何やってんだよ〜」と一緒にいるみんなが笑い話にしてくれたから良かったけれども、振り返ってみるとたまに怖くなる。
興奮しすぎたときには周りが見えなくなることがある。気をつけよう。
ちなみにこの後、僕は観覧車の中に財布を忘れた。なにやってんだ。
そのせいで帰る時間が遅れてしまった。いくら楽しくても調子に乗りすぎないようにしよう。これはマジで。