【第6回】疑似フィンランドトリップ
名古屋で開催された内定者懇親会に参加した僕は疲れ果てていた。
知らない人と長時間話し一緒にご飯を食べるのは気を使うし本当に疲れる。もちろん知らない人と話すのは新しい話ができるから楽しいしご飯も美味しかった。もしここで働くのであればこういった人達と働くんだなというイメージも少しは湧いたと思う。
参加してよかったか、悪かったかと聞かれたら間違いなく参加してよかったと言える。
けれども、終わったあとにくる気疲れはどうしようもない。苦手なのだから。
幸い開催されたのが平日の昼間だったから懇親会参加者も少なかったし社員の人もそのあと仕事に戻っていったから会が終わったらすぐ解散となった。これがもし夜だったら確実にお酒も入り二次会コースだっただろう。
そこで解放された僕は疲れを癒やしにサウナに行くことにした。
サウナと聞くとおっさんの趣味と思うかもしれない。だがしかしそんなことは一切ない。そんな偏見の塊の諸君は今すぐ首を切って来世でサウナへの偏見を改めてほしい。
実はここ数年はサウナがじわりじわりとブームが起こっている。とある企業ではサウナ補助制度なんてものができたくらいだ。
健康にもいいとかいろいろブームの理由はあると思うけれども、単純に気持ちいい。
この日は名古屋におけるサウナの聖地と呼ばれている「ウェルビー栄店」に行った。
なんといってもここの目玉は「森のサウナ」。北極圏のラップランドと呼ばれるような地域を再現したサウナらしい。熱から頭皮や髪を守るサウナハットや腰巻きのタオルが備え付けてあり本格的だ。早速湯船で身体を温めた上でそれらを装備し突入する。
中は普通のスーパー銭湯にあるようなサウナとは違いテレビもなければ暗くて狭かった。そしてそこまで熱くない。
おー、本格的なフィンランドサウナ…!(行ったことないけど)
壁にはヴィ匕タが備え付けてあった。ヴィヒタとは白樺の枝を束ねたもののこと。サウナの本場フィンランドではサウナに入った際にこれでガシガシ身体を叩くことで血行を良くするのだ。
そしてその横には水瓶と柄杓もおいてある。ここではセルフでロウリュを体感できるのだ。ちなみにロウリュとはサウナを温めている熱されたサウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させ体感温度をあげ発汗を促す入浴法のことらしい。なんて本格的なんだ。
意気揚々と水をかけるとジュゥゥ……という音と共に水蒸気が湧き上がる。そして一気に体感温度があがった。
熱い…。
日本のスーパー銭湯にある高温低湿のドライサウナは90℃〜100℃くらいなのだけれども、このロウリュは80℃以下の中音高湿らしい。それを感じさせないくらい熱い。
汗がダラダラと出てくる。ここのサウナは寝転がることができるスペースがあるので寝転びながらヴィヒタでバシバシ身体を叩くと血行が良くなるのかちょっと痒いけど気持ちがいい。
暑い夏に熱いサウナに入るなんて頭がおかしいとおもうかもしれないが、そんなことはない。むしろ暑い夏こそ汗をダラダラ流したほうがさっぱりする。そして何よりその後の水風呂が気持ちいい。
サウナ好きは、むしろサウナに入ったあとの水風呂が好きな人が多い。サウナ、水風呂を繰り返すことで自律神経が整えられリラックスができるわけだ。このサウナ、水風呂の繰り返しを交互浴といい、交互浴をしてリラックスした状態を「ととのった」というのだ。なんならサウナは水風呂を味わうための前戯とまで言い切る人がいる。
この日も水風呂に入るわけだけれども、「ウェルビー栄店」の水風呂は普通の水風呂とはわけがちがう。もちろん普通の水風呂もあるのだけれども、アイスサウナと呼ばれる水風呂がある。
この水風呂はラップランドの地域を再現していて室温−25℃、水温は氷点下に近いらしい。正直やりすぎだと思う。でもこのやりすぎ感を楽しみにきたわけだ。
森のサウナでロウリュを味わったあとはアイスサウナへと入りに行った。そこにあったのは冬。霜がいっぱい張っているし、なんなら水面には氷が若干張っている。
ヤバい。と思いながらサウナの熱が冷めないうちに飛び込んだ。
あ、冷た……、痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!
過呼吸みたいな状態になる。慌てて飛び出した。なんて本格的なんだ。その扉もキンキンに冷えていて手が張り付いたのはびっくりしたが。
普通の水風呂は普通16℃〜18℃くらいでなのだから、正直ここは頭がおかしい。普通の水風呂が暖かく感じた。
ここまで痛い目にあったのにもかかわらず、結局何度も交互浴をしてしまった。ドMだろうか。それくらい最高だった。
まるでフィンランドに行ったような感覚になること間違いないだろう。疑似フィンランドトリップだ。
冷たいおしぼりや麦茶など細やかなサービスが素晴らしい。サウナ好きのためにあるサウナだと思う。お近くに用事の際はぜひ訪れてほしい。目的に行っても損はしないと思う。
ただめちゃめちゃリラックスしたあとに名古屋から2時間かけて下宿先に帰らなければいけないのはなんとも辛いものだ。
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