現在地点。今の仕事から自分の人生を振り返る。そして、未来を考える。
前回書いた内容の続きになるが、
現在の私の職業は、トリマーだ。
まず、なぜ私が30代になって心機一転、トリマーに転職しようと思ったのかを振り返りたいと思う。
私は3年前にトイプードルを飼っていた。
もう虹の橋を渡り、今は天国で穏やかに過ごしていることだろう。
その子を小さなトリミングサロンでカットしてもらっていたのだが、その時に穏やかに犬に接しながらカットしている姿に素敵だな、こんな働き方をしてみたいなと思ったのがトリマーに転職した理由だ。
いや、記憶を辿る。
もっと前だ。
高校生。
進路に迷っていた時、私は3つの分かれ道の前にいた。
1つ目の道は、トリマー。
純粋に動物が好きだったし、その頃から専門職に憧れを抱いていた。
2つ目の道は、演劇科がある学校に進学する事だった。中学生の時、友達にお願いされて演劇部に1年間入部していた。
その頃から私は継続力がなく、中学生では珍しいかもしれないが、1年毎に部活を変えていた。1年生では剣道部、2年生ではデザイン工芸部、そして3年生では演劇部に所属するという変わり身の速さ。
だがそんな私が演劇部で舞台に立ち、思いの外、褒められた。その為、こんな調子の乗った案が出てきたのだろう。
でも、現実的に考えて、そんな度胸も、実力もない。
「厳しい茨の道怖い!」と思い、断念した。
今でも、演劇は大好きだ。
社会人劇団に所属するのが密かな夢である。
3つ目は、短大に進学する道だ。
当時、「勉強はもうあまりしたくないな。だから、四年生の大学は却下。でも最終学歴高卒だと就職大変かな?」という、何とも曖昧で浅はかな動機により、結果、自分の人生に微妙と言うのも惨めだが、そんな道を歩んでいく事になる。
つまり、私は2回もトリマーになりたいと思った。と言う事は、取り敢えずやってみるべきではないか?そう考えた訳である。
話は戻るが、
職場の若い先輩達からは、
「 その歳でこの業界に
転職するなんてすごい! 」
と、言われた。
彼女達にとって、30代前半はもう年寄りなのか?と思ったが、考え方は人それぞれ。そう思う事にした。
しかし、それだけ大変な職業なのだろう。
今なら、わかる。
前回の記事に、
実際に働いてみたトリマーの大変だと思った事は、
・危険
・汚れる
・体力仕事
・人間関係
・低賃金
・休日少ない
と書いた。
その職場によって違いはあると思うが、これは私が今働かせていただいている職場での印象である。
危険
愛くるしいワンちゃん達だが、あの子達も生き物。嫌だなと不快に感じたら牙をむく。中にはまだ何もしていないのに噛み付く、噛み付き犬。暴れん坊の子に引っ掻かれたことも沢山ある。この業界では、手・腕に傷があるのは当たり前らしい。
それだけではない。逆に傷付けてしまう事もある。トリミングでは危険な作業も多い。色々あるが、一番多いのはバリカンやシザーで切ってしまう事ではないだろうか。怪我をさせたくなくても犬が動いてしまったり、一瞬の気の緩みで、、、なんて事もある。私も怪我をさせてしまったことがある。先輩達は誰しも通る道、と言ってくれたが落ち込まない訳がない。深く反省する。
汚れる
動物病院併設のトリミングサロンで働いていて、ペットホテルもやっている。朝はその子達が汚したタオルを洗う事からスタートする。15枚くらいの糞尿が付いた大きなタオルをバケツでバシャバシャとバケツで洗う。汚れた犬舎も清潔にする。
また、抜け毛が多い子をドライヤーで乾かした時は、頭や肩に抜け毛が積もる程。自分の目の中にも抜け毛が入ってしまい、目から長い犬の毛が出てきた時は驚く。
体力仕事
カットする時は中腰、シャンプーする時は前屈み、暴れる子は必死に保定(おさえる事)、大型犬は持ち上げる時は2人がかり。毎日、自分フル稼働!
家に帰ると、もうくたくただ。知らないうちに寝てしまっていた事もしばしば。自分の体力の無さが悲しい。いや、これが先輩達が言っていた年齢の壁か。ベテラントリマーさんのタフさはどこから来るのだろう。
体がバキバキなので、定期的な整体は欠かせない。中には、福利厚生で月に一万円のメンテナンス費を出してくれるという、まことしやかには信じ難い話も聞いたことがある。太っ腹!
人間関係
どこの職場でもそうだと思うが、人間関係の悩みは付きもの。働いてみて思ったが、トリマーさんって意外と気が強い。専門学校の先生もそう言っていたし、先輩方も「トリマーになって性格悪くなった(笑)」と言っていた。それ位、メンタルがタフでないとやっていけない職業という事か、、、。
低賃金
安いです。
求人を見ると、トリマー業界は社保完備になっていない会社も多々ある。最近ようやく、見直されてきているというが、実際どうなんだろう。私の職場は動物病院併設のサロンの為、社保完備だが、個人サロンだとまだ福利厚生などが充実していない所も多いような気がする。
雇われのままだと、中々給料上がらないと思う。だから、独立して自分のサロンを持つ人も多い。でもそれまでの下積み期間が長いのが問題だ。技術職だからすぐにスキルが身につく訳でもない。こればかりは経験を積むしかない。
私の場合は、新人にカットを積極的にさせたくない方針の上司の為、数をこなせない、経験も積めない、期間だけが過ぎていく、上司からの1年経ったよねの圧、という悪循環。年齢のことも考えると、そろそろ進退を考えるべきかもしれない。先輩もここでは新人は育たない、辞めるなら早い方がいいよ、と言われた。確かに、期間だけが過ぎて、技術が身に付いてないなんて無駄の極みだと思う。時間は有限!
休日少ない
過去に飲食店で働いていた事を踏まえると、どっこいどっこいだと思うし、世に蔓延るブラック企業の事を考えるとオフホワイトのように見えるかも知れない。
だが、どうだろう?
年末はしっかり31日まで勤務。繁忙期だからこれはしょうがないにしても、年始の休みは2日まで。
祝日は休みではない。
週休2日はありがたい。
夏季冬季休暇あります!それぞれ5日ずつ!
でも、有給休暇を消費するかたちで!
ん?
上司
「この期間に夏季冬季休暇とってね。他、繁忙期になるから」
ん?
休み取得したい日を、自由に選べないとは、、、。
色々と書いたが、とにかく大変だ。
トリマーとして長く働いている方々に頭が上がらない気持ちだ。
自分の浅はかさや、まだまだ努力が足りない事が情けない。
今働いている職場は恐らくそう近くないうちに辞めるだろう。
トリマーを続けるか、、、。
年齢の事を考えたり、自分の体力の事を考えると転職して、トリマーとして再出発はなかなか勇気が要る選択だ。
また、スピード感を持って仕事をしなければいけない事の難しさも私の悩みである。
でも、トリマーとして犬を可愛く、綺麗に清潔にするのは大好きだ。飼い主さんも喜んでくれる。とてもやりがいを感じる。
先輩は、
「私にとって、トリマーは天職だ」
と言っていた。
正直羨ましい。
まだ、1年でおこがましいだろうか?
今後のことを考えると、頭を抱えたくなるが、下を向いてても何もならない。
30代になっても
まだ、人生を模索している。
学生の頃、街行く大人を見て、
大人って余裕あるな、と思っていた。
私もその年代になったらあんな感じになると、勝手に思っていた。
現実は違っていた。
どこで道を間違えたのか。
はたまた、こうなるべくして成ったのか。
日々、手探りだ。
私の周りには、沢山のものが落ちている。
大きくてツヤツヤしている物。
凸凹で歪な物。
目を凝らして、見ようとしなければみれない物。
自分に合った物を、
自分の手にしっくり馴染む物を探している。
手に馴染んだら、それを大切に育てる。
それまでは、キャッチ&リリースの繰り返しだ。
早く見つけられる人もいれば、
私みたいな人もいる。
もしかしたら、最後の時まで見つけられないかも知れない。
それならそれで良い。
そしたら自分の人生に、
『 探し物の物語 』
とタイトルを付けよう。
そしたら、悲観せずに悪くない人生だと思えるような気がする。