セシボンといわせて(十九日目/今日こそセシボンな日)
〈十九日目/今日こそセシボンな日〉
《喜べ 今日はセシボンな日
まさしく 今日こそセシボンな日
まさしく その名の輝く日
まさに 今日こそセシボンな日》
午前5時前 トイレの位置のみ直す。鳴いているのでしばらく側にいる。
午前9時30分 ケージの掃除を始める。トイレを片付け、ケージに引き入れられて、 濡れてぐしゃぐしゃになった雑巾を除く。水をやり、カリカリとパウチのエサをやる。
午前11時 私はレンチンのパスタで昼食の準備。母はドアを開放して空気を入れ換えがてら、玄関周りの掃除をしている。
午前11時20分 「猫、逃げた!」母の大声。
え? どうやって?
玄関に置かれたケージをまじまじと見つめる。上下段の扉はどちらも閉まっている。まだケージ内に存在していた気配は消えていない。だのに、確かにケージはもぬけの殻だ。
居たはずの空間をじっと見つめている。 ケージの左下の隙間に黒い毛が沢山付着している。
すきま、だ。
下段扉の左下の角にいつの間にか隙間が出来ている。大きくはない。けれども、よく見れば、扉の左下が外側に向かって歪んで斜めに小さく開いて隙間になっている。
黒いものが物凄い速さで道路に飛び降りた、あっという間に消えた、と私を窺うように話していた母が、ドアを開けててごめん、と言った。
お母さんの所為じゃないよ。――――これは本心だ。
既製品のトイレに変えてから、トイレとケージの間に入り込んで座っていることが多かった。体勢は色々だったっけ。狭いところが好きらしいから、そこにいるんだろうと思っていたんだ。最近の私は油断して、カラビナだのクリップだので留めてはいたけど、その数も初めに比べて減っていたし、下段の扉は左上の角を含む上側だけを留めていた。そこに座っているセシボンに触れてしまって怪我をするのが怖くて、下の角を留めなくなったのが始まりで、いつしか下を留めなくなっていたんだ。
扉の下角に体をずっと押し付けて、体重を乗せて、乗せて、のせて、のせて、ほんの僅かずつ押し開いて、懸命に作った隙間から、玄関のドアの開いていたチャンスを掴んで、自分で必死に逃れたのだ。
おめでとう、セシボン。君にとって今日こそセシボンな日。
《叫ぼう、自由を、喜びを
解放された喜びを
高らかに歌え セシボンな日と
祝おう、高く、叫べ、セ・シ・ボン!!》
***セシボンとの日々をまとめました。目次もありますので気になる日だけ選べます…🐈⬛🐈⬛🐈⬛***
☆☆☆見出し画像はみんなのフォトギャラリーより、れでぃ様の作品『天色』を拝借しております。ありがとうございます😊☆☆☆☆☆