【TRPG】「逆転検事2」で気づいたTRPGの「余裕」──オンラインセッションの限界?
■はじめに
「逆転検事2」というコンピュータゲームをご存じでしょうか。
これは「逆転裁判」シリーズの外伝的作品で、「逆転裁判」では主に敵(友達)として現れる検事・御剣怜侍を主人公にしたものです。
機会があって「逆転検事2」を遊ぶことになったのですが、その中で、TRPGのセッションにも通じるものがあることに気づいたので、書いてみたいと思います。
なお、筆者は、「逆転裁判」1~4と「逆転検事」1~2はプレイ済みです。
■正解を求めるだけではない──「余裕」の楽しさ
「逆転検事」(というより「逆転裁判」シリーズ全般)がどのようなゲームかというと、プレイヤーが検事や弁護士となり、殺人事件を解決していくゲームです。相手の証言の矛盾をついたり、証拠を探したりと、なかなか頭を使うゲームです。
選択肢を総当たりすればほぼクリアーできるゲームではあるのですが、失敗しすぎるとゲームオーバーになるので、そううまくいきません。
このシリーズの面白さのひとつに、「演出がコミカル」なところがあります。
鞭で弁護士を打つ検事が出てきたり、オウムに尋問したり、裁判中に熱々のコーヒーを投げつけられたり、どう見てもダジャレでしかない名前のキャラクターが出てきたりと、あげていけばきりがありません。
ゲームなので「正解」を求めて動くのは当然なのですが、わざと失敗することによって、そのときしか見られないコミカルな演出が見られることがあります。
裁判もツッコミどころ満載なので、純粋に「正解」を求めて動くのもありですが、わざと失敗してコミカルな演出を見るという「余裕」のある遊び方をすることもできます。
■TRPGにおける「余裕」
ひるがえって、TRPGのセッションを見てみましょう。
TRPGのセッションが、ただシナリオクリアーへ向かうために動いているかというと、ちがいます。
セッションには雑談がつきものです。いわゆる「脱線」というもので、突然ガンダムの話がはじまったり、最近起こった世間を賑わせている事件の話が出てきたりと、セッションはあっちふらふら、こっちふらふらします。
リプレイ動画やリプレイ本に触れている人から見ると、まさか、と思われるかもしれませんが、セッションではときにそういうことが起こります。
リプレイ動画では、時間制限があるのでできるだけ雑談をさける傾向にありますし、リプレイ本では本筋と関係のない話はばっさり切っています。そのあたりのことは、あまり知られていないのかもしれません。
これはオンラインセッションも同じで、10回ほどオンラインで遊んだ経験を振り返ってみると、あまり雑談らしい雑談をしてないなあと感じました。
いうなれば、「余裕」がないんですね。みんな、シナリオクリアーや自分のキャラのロールプレイに没頭して、脇道にそれることがありません。
「余裕」があるとするなら、ボイスチャットの裏で、テキストチャットで雑談してるぐらいでしょうか。それもごく短いものです。
■雑談の効能
雑談というのは、不必要に見えて、実は必要なものです。
たとえば、顔には出しませんが、GMが「うわ、これからの展開どうしよう」となることがあります。そんなとき、雑談の中からヒントを得たり、単純に時間稼ぎをすることで対処方法を考えられたりと、雑談にも意味があります。「逆転検事2」にたとえるなら、「待った!」と言って新たな対処方法を見つけたり、時間稼ぎをしたりするようなものです。
プレイヤーも同じで、これから自分のキャラクターをどのように動かせばいいか困ったときに、雑談の中からヒントを得られることがあります。
一見、脇道にそれて時間ばかり食うように見える雑談。
でもそれこそが、TRPGのセッションを豊かにする「余裕」でもあるのです。シナリオ本編よりも、雑談の方をよくおぼえている、なんてこともありますが、これは普通のことです。
■雑談をしにくいオンラインセッション──オンラインの“限界”
オフラインセッションでは、雑談が容易です。
相手の顔が見えるため、誰と誰が何の話をしているのかがすぐわかります。顔を見て話を聞いていれば、どのあたりで話を切って本筋に戻せばいいかもわかってきます。
ですが、耳と口しか頼るものがないオンラインセッションでは、雑談をしにくい傾向にあります。
ボイスチャットでは、複数の参加者が同時にしゃべりだすと、誰が誰だかわからなくなることがありますし、どのタイミングで本筋に戻すか迷うことがあります。
また、プレイヤー側でも、早くシナリオをクリアーしたいという気持ちが働くので、雑談をひかえる傾向にあります。オフラインなら1日で終われるシナリオが、オンライン(ボイス、テキストふくむ)だと数日にわたって行われることからも、オンラインセッションの参加者は時間に対して敏感であるように思います。
この敏感さが、雑談をなくし、ときにはTRPGから「余裕」を奪うことがあります。
もし、映画「マトリックス」やアニメ「ソードアート・オンライン」に出てくる技術で、五感を使ってオンラインセッションができるようになれば、これらの問題は一気に解決するでしょう。ですが、そこに行きつくにはまだまだ時間がかかります。
そういった技術が出るまでは、セッションを豊かにする「余裕」という面で、オフラインセッションに一日の長があるように思います。
■終わりに──「余裕」を楽しむ
雑談はセッションを楽しむ「余裕」であり、脇道にそれるものですが決して無駄なものではありません。
時間を見つつ、「余裕」を楽しむことができれば、TRPGはさらに面白くなると思います。
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