愛犬・外飼いトイプードルの思い出16
散歩は朝・夕2回、食事は朝・晩2回の規則正しい生活を送っていた。
朝、起きるのは6〜7時頃。それは夏は暑くなる前に、冬は明るくなってからと季節によって散歩の時間が変わるからだ。
シニア犬になってから夜は玄関に置いたゲージっで寝ていた外飼いの愛犬。朝の散歩は私の担当で、まずゲージにかけられたバスタオルを外すのが日課だった。階段を下りてくる足音で目覚めているのだろう、タオルを外すと柵に前足をかけて尻尾を振る。
「おはよう」と言って抱え上げ玄関を出ると、ガレージを回って庭へ。庭に下ろしておしめを取ると、芝生の上でまずはおしっこ。それから定位置においてあるテニスボールで束の間一人遊びをした後、庭をうろうろしてウ〇チタイム。そのルーティーンが終わったら、ハーネスとリードを付けて散歩に出かける。
さて今日はどっちへ行こう。愛犬は門を出て右へ、坂道を登るコースへ向かうことが多かった。2mほど先にある電柱の臭いが気になるみたいだった。
門を出て道路を渡るコースの時は、ピョンピョン飛びはねて道を渡った。渡りきった後は普通に歩くくせに、このコースの時だけ、出だしがやけに張り切っていた。
門を出て左へ、坂を下るコースに向かうと、トボトボと気乗りしない感じで人の後をついてきた。散歩に行くのがいやなわけじゃないのに、あれなんでだろう。下り坂が得意じゃない犬って多いよね?
どのコースに行こうが、基本は住宅街の道を縫うように歩く。時間にして30分弱という感じか。時々、近くの運動公園へ行ったり、桜の季節はお花見ついでにあちこちへ足を伸ばしたり、天気が悪くて散歩ができなかった次の日はちょっと遠出をしたりしたけれど、普段は近所の住宅街が定番の散歩コースだった。
そんなたわいもない散歩コースでも、毎日歩いていると季節の移り変わりがよく分かる。だんだん日が短くなる頃には、どこかからふと金木犀の香りがしたり、庭の木がうっそうとしたお宅の前の道にどんぐりがたくさん落ちていたり、冷え込んだ朝は庭一面に霜柱が立っていたり、毎年、手作りの立派な正月飾りが見られる家があったり、梅が咲き出して春の訪れを感じられたり……。
日本に暮らす喜びの一つは、四季の移ろいを感じられること。朝、ふとんから出たくない季節でも、ちょっと歩くだけで汗びっしょりになる季節でも、愛犬と一緒だから散歩に行けた。
そういえば、散歩俳句なんてのも時たま作っていたんだけどな。
立春の朝 散歩しす犬 豆拾い食い
一人じゃ散歩、なかなか行かないよねぇ……。