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『Tears in heaven』の素晴らしさ

「ギター上手くなりたいなぁ。でも、何をすればギターが上手いということになるのかよくわからない…。」そう考えていた矢先に、そんな私の悩みを解決するかのごとく提案されたのが、この『Tears in heaven』だった。説明するまでもなく、あのギター界の神!エリック・クラプトンの超有名なバラードソングである。

ただ、イントロからギターの印象的なソロがあり、これまでリズムギターでごり押ししてきた私にとっては、この最初のイントロを表現することが難題であった。YouTubeでこの曲のカバー動画を上げる人たちの指を見ていると「素晴らしい!!!」と、まるで他人事のような気持ちになってくる。

しかしながら、意外にも自分で弾いてみると、普通にコードを押さえるよりも簡単であることに気づいた。実際にはすべての弦を弾いているのではなく、必要な音のみを弾き、必要のないところは弾かない。そして押さえないのだ。

カッコよく見せかけておいて、実は指一つ一つの動きは小さく、手を抜く。これが、神のなす技なのか!!

この曲の面白さはそれだけではない。まず、この曲は2部構成なのだが、サビであるBメロよりも、Aメロの方がインパクトがある。通常は、2部構成の曲であっても、3部構成の曲であっても、サビが最もインパクトのある場合がほとんどだ。

印象的なイントロのギターソロをAメロでも用いることで、リスナーをスムーズに曲の世界に引き込むことはもちろん、この曲がリリースされた1992年以前の曲と、1992年以降の曲との中間をいく、新しい曲作りに成功している。

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次に、Bメロでは、最初の4小節をノンダイアトニックコードでつなぎ、あえて不穏な流れを作っている。特に2小節目から、3小節目にかけてのコードの動きが印象的だ。多くの場合、Ⅲ(7)→Ⅵ(この曲ではⅢはC♯、ⅥはF♯にあたる)に行くが、この曲ではⅢ/Ⅵ♭→Ⅴm6(コードで言うとC♯/F→Em6)となっており、Ⅲ(7)→Ⅵには行かない。

Bメロであえて不穏な流れを作ることによって、間奏(イントロやAメロと同じギターのメロディー)に戻ったときに、リスナーはより心地良いと感じることができる。また、タイトルである『Tears in heaven』(歌詞の中ではhere in heaven)という言葉が、Bメロの1番最後に来ることも、この時代の曲(歌詞)の構成としては斬新だ。

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最後に、大サビであるCメロだが、この部分だけを聴くとkey=Gの曲のような印象を受ける(本当はKey=A)。この曲は、全体を通して聴くと“安定感のある曲”という印象を受けるが、この部分だけを聴くと不安定な感じがする。安定感のある曲の中で、ノンダイアトニックコードや通常使われないコード進行を部分的に取り入れ、安定と不安定の波を作ることで、不安定から安定に戻った時の心地良さがより大きくなる。

大サビから間奏にかけては、そんなテクニックがふんだんに盛り込まれているように感じた。

とは言うもの、エリック・クラプトン自身に、それほどの緻密な計画があってこの曲が完成したとは考え難い。一説によると、この曲は事故で亡くなったエリック・クラプトンの息子へ宛てた曲であるという話もあり、決して作業のように作られた曲ではないように感じる。私が初めて『Tears in heaven』を聴いた時に覚えた感動は、もちろん、理論上のテクニックによる面もあるかもしれないが、それ以上に、ギター界の神であるエリック・クラプトンが紡ぐギターの音色であったり、エリック・クラプトン自身の境遇ありきのものなのかなと思った。

古い曲作りと新しい曲作りの中間を行き、見事名曲を生み出したエリック・クラプトン。最近の流行り曲は、簡単なコードに複雑なメロディーが乗っていることが多いが、『Tears in heaven』のように、複雑なコードにシンプルなメロディーを乗せる曲作りも面白そうだ。カッコよく、でも手を抜く。それがギターが上手いということで、複雑とシンプルのバランスが上手くとれた曲が良い曲なのだと教えてもらった。

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