多人数歌唱
「レクイエム」でポリフォニー合唱を扱ったので、多人数歌唱の色々なかたちを改めて知りたくなった。以下は自分が好きなものを並べているだけですが、今後研究したい。コロナ禍でもっとも活動しがたい「合唱」。いつかやりたいとも思っている。
シンプルなもの
Benny Sings & the Dox Family - Make a Rainbow
ハーモニーはあるが斉唱に近い、楽しくみんなで肩を組んで歌うタイプ。歌詞もよい。
クローズドハーモニー
The Mills Brothers - I Ain't got nobody
クローズドハーモニーと呼ばれる狭い音域におさめたハーモニー。ダマになったくぐもった響き。Mills Brothersはマックス・フライシャーのアニメーション "Bouncing Ball"と関わりがあったり、ヴァン・ダイク・パークスの歌に出てきたりもする。現代の歌手はみな一所懸命歌うが、彼らは低めの音程で声を張り上げず、余裕綽々で歌うスタイル。
オープンハーモニー
音域を広めにとった明快な響き。ビーチ・ボーイズに影響を与えたというFour Freshmen。アメリカのコーラスグループは伝統芸能のように、グループ名を残し、メンバーを変えながら継続していくようです。秘伝のタレ、エバーフレッシュ。
変わったもの
salyu × salyu / ただのともだち
髪型と服をお揃いにするシスターズスタイルだが、ハーモニーよりリズム寄り。パーカッシブでミニマルなコーラス。作曲小山田圭吾、作詞坂本慎太郎コンビ。歌詞だけ見ても北園克衛の詩のようでかっこいい。
アンドリューズシスターズが歌うラム&コカ・コーラ。
WIndows Sound Effect
韓国のグループMaytreeによるウインドウズのサウンドエフェクト、コーラス再現。
ことばのおばけがまどからみている/重音テト
「韻」は時間の前後を繋ぐものだが、これは並列につないでいる。
異なる歌詞を同時に破綻せず歌える。二重の歌詞、すごい可能性を感じる。ルネサンス期の聖歌にもこういうのがあるらしい。
Love Song / NCT 127
合唱とは違うが、グループでの歌唱も進化してそう。違うメンバーの歌唱を短く、異なるメロディでつなぐ。曲調が頻繁に代わり、リフレインが少ない。サビは皆で歌う。(サビのことをChorusと呼ぶわけだが。)
ポリネシア諸島のチャント。
労働や生活と直結した合唱の世界は多様すぎる。
Jacob Collier - Don't You Worry 'Bout A Thing
もはやグラミーアーティストとなったジェイコブコリアーの一人多重録音。複雑精緻なハーモニー、6分持たせる構成などすごいとしかいえない。グリッドのビジュアルはコロナ以前のものだが2020年以降かなり多く見た。
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「人間はなぜ歌うのか」は、うたの起源をモノフォニーではなく、ポリフォニー(この本では広義に合唱という意味)と捉えたユニークな本。世界各地のポリフォニー分布を表した地図なども面白い。
合唱は権力と結びつくこともあるが、ポリフォニーの自律分散性は今の音楽にもっと使われる余地があるように思う。ポリフォニーアイドルが生まれてもよい。
最近読んだ本で、狩猟民が一人ひとりバラバラに歌う歌がある、としった。大勢いるのに、個別に歌うそうだ。みんないるのにバラバラ、というのは究極のポリフォニーかもしれない。
「cho ro bretete, cho ro jyvoudy, cho ro yma wachu, yma chija. 訳:俺は偉大な狩人だ。俺はいつも俺の矢で殺す、俺は生まれながらに強い、生まれながらにして興奮し攻撃的なのだ」
引かれているのは、南米グアヤキインディアンを研究した「国家に抗する社会」だが歌の語句はこのグアヤキインディアンの本(ポールオースター訳!?)にも載ってるようだ。