Keita Onishi

大西景太/映像作家 音の質感、音楽の構造をアニメーションで表現する手法でミュージックビデオ、映像インスタレーションなどを制作します。www.keitaonishi.com

Keita Onishi

大西景太/映像作家 音の質感、音楽の構造をアニメーションで表現する手法でミュージックビデオ、映像インスタレーションなどを制作します。www.keitaonishi.com

マガジン

  • 音楽や本の感想

    ただの感想です。

  • Visualization of Music

    音楽を可視化した自作の映像作品について、その解説です。

  • 音のかたちを見る

    古今東西の色々な音楽を、視覚的にとらえることで理解できるか?試みのスケッチを記録しています。

最近の記事

Mind Train / 音楽=電車

コーネリアス「Bad Advice / Mind Train」の12インチアナログ盤発売(2024/8/21)にあわせ、Mind TrainのMV(7/5公開)制作時に考えていたことを公開してみます。(有料設定ですが最後まで読めます) To coincide with the release of the 12-inch vinyl of Cornelius's "Bad Advice / Mind Train" (August 21, 2024), I'm sharing

¥300
    • 音楽を視覚化することでよく聴く、というワークショップを考えてみる

      コーネリアス、民謡、バロック音楽など、色々なジャンルの音楽を視覚化した映像表現を行なってきたが、この手法を用いてワークショップを行ったり、授業で学生さんにトライしてもらったりすることには全然興味がなかった。 自分の方法を人に伝えて作らせても劣化コピーしか作れないだろう、彼ら自身のオリジナルな表現に達することができないなら意味が薄い、と考えていた。 しかし最近「美術作品の対話型鑑賞」という授業方法を学びつつあって、考えが変わってきた。 この方法は、ひとつの作品を皆でじっくり

      • 連鎖インフルエンサー (立川談志「文七元結」と中島岳志「思いがけず利他」)

        タレントさんの自殺報道があったあくる日、朝から人身事故があり、帰りも別の人身事故で身動きがとれなかった。報道がトリガーになって連鎖してしまったように思えてしまう。 読みはじめた「思いがけず利他」という本には、落語「文七元結(ぶんしちもっとい)」が、利他を考えるきっかけとしてとりあげられている。川に身投げしようとする男を助ける噺は、電車を待つ今の状況とリンクするし、聞いたことがなかったのでスポティファイやyoutubeで聞いてみた。この話は利他行為が連鎖する。 落語にネタバ

        • サクッと表現する健康 (a life/大貫妙子、坂本龍一)

          坂本龍一が亡くなってしばらく経つが、評論などはあまり読まずに、どういう存在だったのかなと、モゾモゾ考えている。 大貫妙子と坂本龍一による「UTAU」収録曲「A Life」では「汗を流そう、ごはんを食べよう、ぐっすり眠ろう、つま先まで」と人間らしい充実した生活が描かれているが、その中に「見たら助けよう、手を伸ばして」も含まれているのがよい。それも人間らしい健康な生活に含まれる、という大貫の毅然としたLife観。 いっぽう電車の車内では、高齢者に席を譲らない人が圧倒的に多い。

        マガジン

        • 音楽や本の感想
          10本
        • Visualization of Music
          9本
        • 音のかたちを見る
          6本

        記事

          名曲アルバム+「北海道民謡/江差追分」

          NHK「名曲アルバムプラス」のために「北海道民謡 江差追分」の映像を作りました。(2023年3月12日放送)この歌と映像について少し書いておきます。 なぜ江差追分か。 前作「名曲+」では無伴奏の合唱「レクイエム」を作りました。コロナ初年の2020年冬、皆で歌う楽しさが失われた年でした。(放送'21年3月) それを経て今回、合唱もいいが独唱もいい、と思いました。他人と息をあわせる合唱に比べ、ひとりの歌は自由です。今回テーマにした江差追分には拍節がなく、伸ばし方も歌い手次第

          名曲アルバム+「北海道民謡/江差追分」

          メモ:自転車のイメージ

          春、仕事場が都心にうつったので、自転車を買った。東京は自転車があれば電車を使わずとも結構いろいろ行けると聞く。買ったのは小径車で歩行の延長、というイメージ。ロードバイクは格好いいが、車やズームレンズや武器に近い「距離を制する本能」という感じもある。高田渡は「自転車にのって」で「ちょいとそこまで歩きたいから」と歌った。自転車だけど走ってない。 緒方壽人著「コンヴィヴィアル・テクノロジー」で、テクノロジーは人間の力を拡張するが、行き過ぎると逆に人間を損なうので適度なバランスを保

          メモ:自転車のイメージ

          多人数歌唱

          「レクイエム」でポリフォニー合唱を扱ったので、多人数歌唱の色々なかたちを改めて知りたくなった。以下は自分が好きなものを並べているだけですが、今後研究したい。コロナ禍でもっとも活動しがたい「合唱」。いつかやりたいとも思っている。 シンプルなもの Benny Sings & the Dox Family - Make a Rainbow ハーモニーはあるが斉唱に近い、楽しくみんなで肩を組んで歌うタイプ。歌詞もよい。 クローズドハーモニー The Mills Brother

          多人数歌唱

          Audiovisual ARアプリ「Forest and Trees」がリリースされました。(2022年2月)

          アプリ概要音の印象を視覚化したアニメーションオブジェクトを配置して、オーディオビジュアル環境をつくれるARアプリをリリースしました。iiOSのみ、無料。株式会社白(siro Inc.)と共に開発しました。iPad推奨です。 2020年に発表したARインスタレーション作品が元になっています(後述) アプリでは、自分で選択したオブジェクトを好きなタイミングで平面上に配置していくことができます。長押しすると消去でき、ドラッグすると場所を移動することも。イヤホンをしていれば、オブ

          Audiovisual ARアプリ「Forest and Trees」がリリースされました。(2022年2月)

          聴くバッハ、そして観るバッハ(フーガの視覚化)

          鍵盤奏者、大塚直哉さんのレクチャーコンサート(2021年7月11日)に、映像作家としてゲスト出演した記録です。 このレクチャーコンサートシリーズはバッハの「平均律クラヴィーア曲集」をとりあげ、大塚さんのレクチャーを交えながらポジティフオルガンとチェンバロという2種の古楽器で聴き比べるという企画です。 「平均律」はハ長調、ハ短調、嬰ハ長調、嬰ハ短調...と12の長短調すべてをたどる24曲(その全ては前奏曲とフーガの組み合わせなので48曲)ですが、そのセットは2巻存在し長大な

          聴くバッハ、そして観るバッハ(フーガの視覚化)

          レクイエム/カルドーゾ作曲

          NHKの番組「名曲アルバム+(プラス)レクイエム/カルドーゾ作曲」の制作メモです。(2021年3/25放映) 選曲について今回の「名曲アルバムプラス」は、コロナ禍の影響を受けて新規録音ができず、既存の「名曲アルバム」音源を用いての制作となりました。今までは音のミックスにまで要望をいれてもらい、音を聞き分けやすくしていましたが今回それができないため、最もシンプルで全ての音が聴き分けられるものを選曲しました。 選んだ曲、17世紀の作曲家マヌエル・カルドーゾによる「レクイエム」

          レクイエム/カルドーゾ作曲

          血よ

          青葉市子のアルバム「アダンの風」収録曲「血の風」は沖縄の言葉で歌詞が書かれている。どんな意味か気になって、インタビューなどを色々みた。(mikiki/daisy holiday/七尾旅人LIFEHOUSE)以下は「血の風」から抜粋 チヨチヨ(血よ、血よ、) フーヤメ ヤラワン(疫病あれど) ウトゥルシヤ ハミドゥル ヤラワン(激雷あれど) ヤミユ ヤラワン(闇夜あれど) ナー ミチミチ ンカイイキ(己の道をゆけ) 沖縄県宜野湾市の民俗学者・佐喜真興英による「シマの話」(1

          5.高田渡「ブラザー軒」/透明キラキラの結界

          音の可視化についていくつか書いた。1は音程の上下、2は音の左右移動、3は音の偏在、4は入れ違う音。今回は少し外れて、主に歌詞の世界を見る。音のことも最後に少しだけ。 高田渡(1949-2005)は山之口獏、金子光晴などの現代詩にアメリカのフォークを合わせて多くの曲を作った。「ブラザー軒」という曲は、詩人菅原克己の同題詩を歌をつけたもの。七夕の夜に「僕」が亡くなった父と妹を幻視する話だ。 東一番丁ブラザー軒 硝子簾がキラキラ波うち あたりいちめん氷を噛む音 死んだ親父が入っ

          5.高田渡「ブラザー軒」/透明キラキラの結界

          小津安二郎メモ

          4月から6月、よく小津映画を見ていた。Twitterで見た「Zoom東京物語(森翔太)」とインスタで見た「フランス版ポスター」(Tom Haugomat)をきっかけとして定番の「東京物語」からはじめ、色々見た。 小津については多くの論考があるが、昨今のデジタルリマスターと配信によって、それらを参照しつつ高画質で(スクショしながら)見ることが可能になっている。以下、そうして見た一連の小津作品の好きなところを整理しておこうと書いた。 アップダウンのなさ映画の中で話が大きく動か

          小津安二郎メモ

          4.オノシュンスケ「ディスコって」/異形のクロスワードダンス

          「ディスコって」はSynsuke Onoによる坂本慎太郎の同曲のカバーだが、「原曲と両A面扱い/坂本がMV制作」という破格の待遇でリリースされたもの。 オノの音楽についてはクエストラブ(Questlove/The Roots)が、オノによるスライ&ザ・ファミリーストーンのカバー集”Electro Voice Sings Sly Stone”を評した言葉として 「his “Crossword Puzzle” is WOW」 (彼の「クロスワードパズル」は驚きだ) を残して

          4.オノシュンスケ「ディスコって」/異形のクロスワードダンス

          3.Sweet Williamと青葉市子「あまねき」/オーディオ・アニミズム

          このマガジン「音のかたちを見る」は、既存曲を視覚的に捉える試みの記録です。 オーディオ・アニミズム2018年の展覧会「音のアーキテクチャ:Audio Architecture」展の企画は、 コーネリアスの音楽をショーン・オノ・レノンが評した言葉 “He paints a kind of audio architecture”(彼は音楽の構造物を描いている)が契機になったとのこと。(展示ディレクター中村勇吾氏のコメントより) このAudio 〜という言葉はなかなか便利で、任

          3.Sweet Williamと青葉市子「あまねき」/オーディオ・アニミズム

          Spotifyに変えた

          Apple MusicからSpotifyに移った。Apple MusicでたまたまLikeした「フィッシュマンズ」に反応したアルゴリズムが、自分の苦手な洋楽もどきJ-Popばかり再生してきたのがきっかけだ。以前よりSpotifyのほうが、好みに合わせた選曲をしてくれるという噂を聞いていた。 変えた1日目まず好きな曲、オノシュンスケ/坂本慎太郎の「ディスコって」を聴き、そのまま「オノシュンスケRadio」なる自動生成プレイリストを聴く。 すると、初めて聴くのに好きと思える曲

          Spotifyに変えた