バッハ「14のカノン」の構造(1)
NHK名曲アルバム+(プラス)のために今回はJ.S.バッハ作曲「14のカノン」を作りました。2018年の「パッヘルベルのカノン」に続くシリーズです。「パッヘルベル」ほどわかりやすくないため、解説を記します。
基礎知識
「14のカノン」は比較的マイナーな曲です。「ゴルトベルク変奏曲」の私蔵版が1974年に見つかった際、その余白ページに書き込まれていたものが発見されたという、バッハの「新譜」です。カノンの様々な技法が駆使され、きわめて幾何学的でシンメトリックな構造をしているところが魅力です。なぜ14曲か、というとB.A.C.Hのアルファベット順を数字に置き換えて足した合計であり、仕組みへのこだわりが伺えます。
曲の詳しい説明はこのリンクの「小川P」による解説が非常にわかりやすいのでぜひ見て欲しいです。(バッハは日本語で「小川」ですね)ここでは「謎カノン」の説明などは割愛し、ビジュアルとの関わりのみ記します。
この曲群は誰でも聞いたことがある「ゴルトベルク変奏曲」の「アリア」の低音8音を元に展開していきます。以下映像はその8音を強調したものです。
14曲は「無限カノン」
この8音から「14のカノン」1曲め(No.1)が始まります。14曲は全て独立した「無限カノン」と呼ばれるかたちを取ります。ループ再生可能ということです。今回は番組の枠である5分にあわせ、7曲(No.1、2、3、5、9、11、13)を抜粋しています。曲がすすむごとに複雑化していきます。
No.1
Canon simplex (simple canon)
単純カノン
8音を立体化してループ形状にしたもの
1曲目は「単純なカノン」と名付けられていますが、いきなり「逆行カノン」です。楽譜を反対側から演奏しても成立し、順行と逆行の同時も可能です。左右対称であるため「蟹行」とも言われます。
行きは黄色
帰りは青
🦀行き帰り同時🦀
No.2
Canon all' roverscio (canon in inversion)
反行形
2曲めは1曲めの基本形を鏡に映したように上下に裏返したものです。音楽用語で「反行」や「転回」と言われるものです。以下画像の上が2曲め、下が1曲めです。(1コマが半音、2コマが全音であり、厳密に半音単位で鏡ではない。)
1曲め同様に逆行カノンでもあります。
No.3
Canon in motu recto e contrario
(both previous canons simultaneously / the subject followed by its inversion)
「正置形と反行形、前の2つのカノン旋律を同時に」
1と2が開始点をずらして同時再生されます。(2は前曲より1オクターブ上)
No.5.
Canon duplex à 4 (double canon in 4 parts)
4声の2重カノン
前述の基本形と反行形の組み合わせに、もうひと組の旋律が加わります。(バイオリン)こちらも鏡あわせのように順行と反行の旋律が。
上=反行、下=順行
これもまた、ずれて演奏されます。
名曲アルバム+(プラス)
初回放送 3/22(日)NHK総合午前6時45分
再放送 3/27 (金) NHK総合 AM 4:02〜4:07
J.S.バッハ作曲「14のカノン」
編曲・チェンバロ 大塚直哉
バロック・バイオリン 大西律子 池田梨枝子
映像 大西景太