バッハ「14のカノン」の構造(2)
(1)からの続きです。gifもつけました。
No.9
Canon in unisono post semifusam à 3
(canon in unison after a semiquaver in 3 parts)
16分音符差の同度カノン、3声
この曲は鏡のような「反行」はなく、「パッヘルベルのカノン」のように同じメロディを後追いします。が、16分音符差という僅差での追随になっています。1曲めと同じ基本形が伴奏となります。
画面上部の休符がポイント。
No.11
Canon duplex übers Fundament à 5
(double canon over the foundation in 5 parts)
定旋律上の2重カノン、5声
1曲めと同じ基本形に「順行と反行の組み合わせ」が2種類乗っています。今回とりあげた中で、この曲だけは完全に半音単位での上下対称となっています。
中央の赤い四角。上下対称。
ずれて再生
外周の青い円錐。この旋律も完全な鏡像。
No.13
Canon triplex à 6 (triple canon in 6 parts)
6声の3重カノン
「順行と反行の組み合わせ」が3種類で計6つのメロディとなります。他の曲同様、上下がずれて再生されます。バッハが肖像画で手に持っている楽譜はこの曲が原型となっています。(わずかにブラッシュアップされている)
下、黄色。基本形とその反行
左、シアン。バイオリンの副旋律。
右、マゼンタ。高音の旋律。薄ピンクは唯一、上下が同音を弾いている。
バッハが音楽学術交流協会に第14番めの会員として
入会するときこの曲を改変したものを提出したそうです。
ピンクの色を反転した箇所のみ改変されています。
演奏、録音、ミックス
編曲・チェンバロ演奏は大塚直哉さん(東京芸大古楽科教授)、バロック・バイオリン演奏は大西律子さん、池田梨枝子さんです。クラシックではほぼ行わないという多重録音にご協力いただきました。「ヤング」と呼ばれる古典調律法になっているとのことです。(約半音低い)
録音とミックスはNHKの入江さんです。なるべく左右に振り分け残響を抑えめに、それぞれの音を判別しやすいシンメトリーなミックスにしていただいてます。
さいごに
以上のような仕掛けは音のパズルのようで、現代にもない前衛性を感じながら制作しました。初見でわかる単純さが無いため、一回性の強い「番組」より、VR、AR化して繰り返し色々な角度で見るほうがより理解しやすいかもしれません。
割愛した12,14曲めは基本形を拡大/縮小した、さらに手の込んだカノンであり、到達できず少し残念です。見つかった楽譜の最後には「&C(etc.の意)」と書かれており、カノンのさらなる展開も示唆されています。このカノンシリーズも&Cになるでしょうか。
参考文献など(リンクつき)
小川Pの「14のカノンの謎を解く」解説動画(前述)
ニコ動。とても参考になりました。
ゲーデル・エッシャー・バッハ
書籍。ぱらぱら見ただけで未読。バッハとエッシャーには幾何学、永続性、鏡など共通性がある。
エッシャー×nendo
2018年オーストラリア・メルボルンでの展示。版画と展示設計のコラボレーション。
ノーマン・マクラレンのカノン
1964年のアニメーション。カノン構造がはじめてアニメーション化されたもの。
高橋悠治「14のカノン」
CD。1976年の世界初レコーディング。(楽譜は1974発見)ふわふわしたRolandのシンセサイザーで演奏され、かわいい。左右に完全に分けたミックス。
バッハ・コレギウム・ジャパン「14のカノン」
CD。配信もあり。2016年の教会での録音、残響多め。
名曲アルバム+(プラス)
初回放送 3/22(日)NHK総合午前6時45分
再放送 3/27 (金) NHK総合 AM 4:02〜4:07 ←(👀)
J.S.バッハ作曲「14のカノン」
編曲・チェンバロ 大塚直哉
バロック・バイオリン 大西律子 池田梨枝子
映像 大西景太
我が名もシンメトリー
http://www.keitaonishi.com