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ドラマ感想「地面師たち」

初めて、Netflixに加入した。
まずは気になっていた「地面師たち」を視聴。

丸一日で一気に観るには体力がいる、濃いドラマだった。

地面師詐欺とは、土地の所有者になりすまし、大金を得る不動産詐欺を指す。地面師詐欺集団は、あらゆる手段を使って前代未聞の巨額詐欺を成功させようとする――

2017年に実際に起きた地面師の事件がモチーフとなった小説のドラマ版。
当時のニュース番組によく登場していた「地面師」という言葉がキャッチ―で、どんな事件かは分からずとも、記憶に残っていた。

「地面師」は太平洋戦争後から、横行している詐欺らしい。
土地の所有者の行方が分からなくなり、権利関係がはっきりせず、戦後の混乱などの事情から、詐欺が増えた。また、バブル期にも地価の高騰から「地面師」詐欺が増えた。
その後は、本人確認書類などなりすましが難しくなったことから沈静化していたらしいが、東京オリンピック開催前を機に地価が高騰、地面師詐欺が再発するようになったそうだ。

まず、こんな事件が本当に起きていたことに驚く。
本人確認書類って偽装できるんだ……!?
免許証のICチップって、偽装できるんですね。免許の更新って面倒だと思っていたけれど、これは更新しないと、偽装される危険性があって怖い。それに、写真がついていない本人確認書類の意味を考える。現在のマイナンバーカードも、そのうち偽装できる人が現れるんだろうか。なんでこんなにややこしく、複雑な書類ばっかりなんじゃいって思ってたけど、こういう犯罪への対策でもあったのか。

地面師たち、被害者となる石洋ハウス、警察の3つの視点から物語が進んでいく。どこにも感情移入できるものではない。外側からみている感じ。
地面師たちの、地上波では流せない会話。
表情を出す演技と表情を出さない演技。
刑事の下村はリリー・フランキー。今まではしゅっとした静かな演技のイメージだったけれど、感情を露わにしている。死への抗いや醜さに揺さぶられ、苦しかった。ドラマとはいえ、そんな展開にしないでくれ~って丸二日ほど落ち込んだ。
逆に表情を出さない演技は、ハリソン山中を演じる豊川悦司。丁寧なたたずまいが怖い。
ホラーもグロテスクも避けている私が、今まで観た映画で最もグロテスクだと感じたのは「ミッドサマー」。それを越える映像がいくつも現れる。
ハリソン山中が静かに人を痛め続けるシーンがある。その間は、彼の顔がアップになっているので、グロテスクなシーンは視聴者に見せない心遣いなんだな、と安心したらダメだ。その後に、突然やってくるから。反射で目をつむったし、その後のハリソン山中暴力シーンがある度に、手の隙間から覗いていた。大人向けってグロイ……

植物に注目すると、石洋ハウス社内が気になった。
大企業らしい観葉植物の置き方。棚の上などに植物が配置されていたが、どれも小さい。こだわったセットだろうと思うので、意図があるんだと思う。
忙しい会社だから、誰も気にかけず、すぐに枯れるんだろうな。そして、誰かが、オフィスには緑があった方がいい、とか言って、経費で買い足されるんだろうな。とか、想像した。

下村が地面師たちをカフェで見張るところがある。見張りを続ける中、倉持(池田エライザ)からの電話が鳴る。観ているこちらが、物語に入り込み、イラっとしたところに、次の展開を知らせる人物が登場してくる。立ったまま観ていたら膝から崩れ落ちたと思う。脚本に感情を操られた。あとから思い出して悔しいくらい、鮮やかなシーン展開だった。

【地面師たち】
監 督:大根仁
出演者:綾野剛、豊川悦司
原 作:新庄耕(小説)
公開年:2024
場 所:Netflix

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