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ドラマ感想「三体」
『あなたは宇宙のウインクを見たことある?』
中国の作家・劉慈欣によるSF小説「三体」をご存知ですか?
SNSやテレビで取り上げられていて気になり、文庫本を購入した。
でも、物語が難しいの!
自分の想像力のなさが恨めしい。シリーズ1作目の「三体」を半分ほど読んで、止めていました。おもしろいことは分かるのに、物語に入り込めないもどかしさがあったから。悔しい。
Netflixで実写ドラマ化されているので、まずはそちらを観ることにしました。
葉文潔(イエウンジェ)は、物理学者の父を文化大革命で惨殺される。 失意の日々を過ごしていた彼女は、軍事基地にスカウトされる。そこは、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた基地だった。そこで研究されていたのは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトだった。
面白いけれど、よく分からない。よく分からないけれど、面白い。
葉文潔(イエウンジェ)が主人公かと思っていた。彼女の父親が、文化大革命で斬殺される壮絶な過去から、この物語は始まる。それは小説でもドラマでも同じだった。
1作目の半分しか読んでいないので、こんな展開になることを知らなかった。なんだか勝手に裏切られたよ! と思っていたら、ちゃんと裏切る展開もある。そういうことだったの、そのシーンはこう繋がってくるのか、って揺さぶられる。
そんな原作を少ししか読んでいない私が、原作でいちばん感情が動かされたのは白沐霖(バイムーリン)。腹が立つぜコイツは。ドラマにも登場していて、登場時から腹立ちました。小説から想像する人物像そのままだった。他は難しくて、怒り切れないけれど、コイツへの怒りだけ明確。物語の壮大さと比べると脇役だ(と思う)けれど、白沐霖への苛立ちだけ分かる。
科学者の謎めいた連続死事件を捜査官が、小説を読みながらイメージしていた人物像そのままで驚いた。
巨大なパラボラアンテナなど、小説そのままの世界が実写化されている。主人公たちは大きく改変されている。けれど、物語を分かりやすくする大胆な脚色で、初見にとってはありがたい改変。
でも、そういう物語だったのか、と大筋を掴むことができて嬉しい。物理学や科学者たちの物語でもあるので、細かい部分は分からないけれど、人間ドラマの部分にわくわくする。ウィルを応援したくなる気持ちと、無理はしないでほしい気持ち。ウィルの周りが変わっていき、ウィルも変わっていくのが、辛い。科学者としての判断か、友達としての判断か。
そんな伏線あったなあ、という展開が多いので油断ならず。姿勢よく観ていました。
海辺でヨットを流すシーンが好きだった。
ウィルが恋心を寄せる科学者・ジンが折り紙でヨットをふたつ折る。これは私で、これはあなた、と言って海へ流す。静の時間。
そして、言い回しが好き。「薬よりウォッカを飲みなさい」とか。
リーダー役のトマスが放つ言葉がいちいちかっこいい。
そしてジンの恋人・ラジとトマスの会話には笑った。ラジは頑張っているんだろうけれど……。壮大な物語の中に挟まれる、ちっこい緩さに癒される。
ドラマを観て分かった。この物語は、異なる時代・文化・舞台なので混乱しやすい。過去から現代(未来の技術)へ、現実に起きる超常現象からゲームの世界へ、中国からイギリス(これは実写版だから?)から病室から宇宙へ。
この壮大な物語が、始めは1人の小説家の頭の中にしかなかったのかと思うと、人間の想像力ってたくましい。
『あなたは宇宙のウインクを見たことある?』
その宇宙の瞬きが、地球上のたったひとり、自分に向けてのものだったら。
シーズン1のラストがとても好きだった。一辺倒に見たら悪口でも、別の角度から見れば、意味が変わる。
次シーズンの配信が楽しみ。その前に、小説を読んでしまおうか悩んでいる。